アパレル店員のお兄さんを【推し】にしてもいいですか?
今だけ
クラスの誕生日会。飲み物を片手に菅がみんなの前に立つ。
「みんなー!飲み物持ったかぁー?今回の誕生日会は、コタツでぬくぬく癒し合おうをテーマにお送りします!では、2月生まれのみんなおめでとーーう!!かんぱ〜い!!」
「「かんぱ〜い!!」」
さゆかは菅や麻由たちと同じコタツだった。
「あぁ〜あったけぇ〜。一生出たくねぇ」
「明日も朝から練習でしょ?」
「…現実に戻すなよ。誰か今度の試合見に来ない?」
「1組のゆりちゃん達が見に行くって言ってなかった?」
「あの子たちは矢田目当てなんだよ。というか、見にくる女子みんな矢田しか見てねーんだよー」
「あはは。そりゃあ、あの顔とあの身長でレギュラーならモテて当然。ファンクラブあるんでしょ?」
「俺だってレギュラーなんだぞ!?なんなら矢田より多く試合出ることあるし!」
「はいはい。クラス違うから話したことないけど性格も良さそうだよね」
「そうなんだよ。矢田は性格までいいんだよ〜。俺が試合でミスってもフォローしてくれるし」
「そんな完璧なら彼女いるんじゃないの?」
「…女子の皆様、朗報です。矢田は今、彼女いませーん!チャンスだぞ、お前ら!!」
(そうか、イケメンでもモテる人でも彼女いないことあるのか)
20日がやってきた。放課後、着替えを済ませ待ち合わせ場所に着くと、一台の車がさゆかの前に停まった。
「さゆかちゃん!」
運転席から滝が降りてきた。
「どうしたんですか、車!」
「びっくりした?ドライブなら被らないかなって。さぁ、どうぞ」
さゆかの手を取り、助手席にエスコートする。
(なっ、なっ、なにこのシチュエーション!推しと!滝さんと!ドライブー!?)
「シートベルト大丈夫?」
「はいっ」
「どこに行くかは着くまでの内緒ね。じゃ、行きまーす」
車が走りだす。
運転する滝をチラ見するさゆか。
(運転姿神すぎるー。この横顔、永遠に見ていられる。それにしてもなんだか近い。車内ってこんなに距離近かったっけ)
「寒くない?」
「はい」
「いつもより遅いけど、22時頃には帰り着くようにするね、大丈夫?」
「ありがとうございます」
(そうだよね。未成年を深夜まで連れ回すわけにはいかないもんね。まぁ、そういう紳士なところも好きなんだけど。あーあ、日付が変わる瞬間一緒にいたかったなぁ)
残念そうな顔をするさゆか。
「着いたよ」
駐車場に着き、車から降りるさゆか。
「ここって…」
「水族館の幻想的な雰囲気好きって言ってたから、プラネタリウム好きかなと思って。違った?」
「好きです!こういう所、友達とだと行きづらいので嬉しいです!滝さん最高です!ありがとうございます」
「よかった」
館内に入ると「少し待ってて」と滝が1人でチケット売り場に行った。
「じゃあ、行こうか」
シアターの中は半円状にシートが並び、最前列には寝転んで見ることができるカップルシートがあった。
(どこの席なんだろう)
さゆかがキョロキョロしていると
「さゆかちゃん、こっち」
カップルシートの前で立ち止まる滝。
「え…」
「はい、座って座って」
驚きながらも靴を脱ぎ、座るさゆか。
「限定の席らしくて、予約しておいたんだ。誕生日だし、特等席がいいかなって」
(わざわざ予約してくれたんだ。嬉しい。え、でも待って。むちゃくちゃ近くない!?カップルシートってカップルのためのものだよね!?え、今から推しの隣に寝転ぶの!?)
焦るさゆかの横で、すでに寝転んでいる滝。
「ん?どうしたの?そろそろ始まるよ」
「あ、いえ。…失礼します」
頬を赤くしながら横に寝転んだ。
上映が始まり、数々の星が映し出された。
(わぁー綺麗…)
夢中なさゆかの横顔を見て、小さく微笑む一優。
「あ、これ今日の夜空だね」
小さな声で一優が話しかける。
「ほんとですね」
(やばい。夢中になり過ぎて、推しが至近距離にいることを忘れてた。今、気付いたけど…手が地味に触れてるんだけどー)
急に手に力が入り、ドキドキするさゆか。
(ドキドキしてるのは私だけかな…。そもそも彼女いるかもしれないのに。聞いていいのかな)
「…こういう所、彼女と来たりするんですか?」
(知りたくない答えが返ってくるかもしれない。だけど、これ以上のめり込んでしまう前に知りたい)
「彼女?…いないよ」
視線は上を向いたまま、さらっと答える滝。
(たぶん今、目が合ったら心の中が見透かされてしまう。…良かった、いないんだ)
プラネタリウムを終え、車に戻った2人。
「夜ご飯なんだけど、今日の気分で決めれたらと思ってて。今、何が食べたい気分?」
「誕生日っぽくないかもしれないけど…」
「ん?遠慮なく言って」
「ピザで!」
「最高じゃん!よし、この辺のイタリアンの店調べようか」
スマホで検索を始めた。
見つかったお店でピザを食べ、和気あいあいと楽しい時間を過ごした。
帰りの車内。
(あっという間だったなぁ。推しに誕生日をお祝いしてもらえるなんて、幸せ過ぎた)
幸せな気持ちで外を眺めていた。
「少し寄り道するね」
着いたのは、球場の駐車場。夜間のため人はおらず、グラウンドを照らすライトだけが付いている。
「ごめん、特に外に出るとかじゃないんだけど、誰もいないところがよくてさ」
シートベルトを外しながら滝が言う。
(??私も外した方がいいのかな)
シートベルトを外しながら、さゆかがスマホの時間をみると21時56分だった。
(そろそろ帰る時間だけど、どうしたんだろ)
「ねぇ、見て」
さゆかに自分の腕時計を見せる滝。
(ん?)
首をかしげるさゆか。
「ほら、時間」
「時間?…あ!進んでる!」
「さっき2時間進めておいたんだ。2人でいるこの空間だけ、今は23時57分。つまり…あと3分で誕生日」
「ふふ、タイムスリップだ」
「どうしても1番に直接お祝いしたくて」
(ずきゅん)
時計の針は59分45秒。
「一緒にカウントダウンしようか」
「「10、9、8、7、6、5…」」
(やば、見つめ合ってる…心臓止まりそう)
「「4、3、2、1!」」
「お誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます。こんなに素敵な誕生日カウントダウン初めてです」
微笑み合う2人。
(この人は推し。好きになっても意味がないのは分かってる。だけど、今この瞬間だけ、目の前の彼を好きでいさせて)
「みんなー!飲み物持ったかぁー?今回の誕生日会は、コタツでぬくぬく癒し合おうをテーマにお送りします!では、2月生まれのみんなおめでとーーう!!かんぱ〜い!!」
「「かんぱ〜い!!」」
さゆかは菅や麻由たちと同じコタツだった。
「あぁ〜あったけぇ〜。一生出たくねぇ」
「明日も朝から練習でしょ?」
「…現実に戻すなよ。誰か今度の試合見に来ない?」
「1組のゆりちゃん達が見に行くって言ってなかった?」
「あの子たちは矢田目当てなんだよ。というか、見にくる女子みんな矢田しか見てねーんだよー」
「あはは。そりゃあ、あの顔とあの身長でレギュラーならモテて当然。ファンクラブあるんでしょ?」
「俺だってレギュラーなんだぞ!?なんなら矢田より多く試合出ることあるし!」
「はいはい。クラス違うから話したことないけど性格も良さそうだよね」
「そうなんだよ。矢田は性格までいいんだよ〜。俺が試合でミスってもフォローしてくれるし」
「そんな完璧なら彼女いるんじゃないの?」
「…女子の皆様、朗報です。矢田は今、彼女いませーん!チャンスだぞ、お前ら!!」
(そうか、イケメンでもモテる人でも彼女いないことあるのか)
20日がやってきた。放課後、着替えを済ませ待ち合わせ場所に着くと、一台の車がさゆかの前に停まった。
「さゆかちゃん!」
運転席から滝が降りてきた。
「どうしたんですか、車!」
「びっくりした?ドライブなら被らないかなって。さぁ、どうぞ」
さゆかの手を取り、助手席にエスコートする。
(なっ、なっ、なにこのシチュエーション!推しと!滝さんと!ドライブー!?)
「シートベルト大丈夫?」
「はいっ」
「どこに行くかは着くまでの内緒ね。じゃ、行きまーす」
車が走りだす。
運転する滝をチラ見するさゆか。
(運転姿神すぎるー。この横顔、永遠に見ていられる。それにしてもなんだか近い。車内ってこんなに距離近かったっけ)
「寒くない?」
「はい」
「いつもより遅いけど、22時頃には帰り着くようにするね、大丈夫?」
「ありがとうございます」
(そうだよね。未成年を深夜まで連れ回すわけにはいかないもんね。まぁ、そういう紳士なところも好きなんだけど。あーあ、日付が変わる瞬間一緒にいたかったなぁ)
残念そうな顔をするさゆか。
「着いたよ」
駐車場に着き、車から降りるさゆか。
「ここって…」
「水族館の幻想的な雰囲気好きって言ってたから、プラネタリウム好きかなと思って。違った?」
「好きです!こういう所、友達とだと行きづらいので嬉しいです!滝さん最高です!ありがとうございます」
「よかった」
館内に入ると「少し待ってて」と滝が1人でチケット売り場に行った。
「じゃあ、行こうか」
シアターの中は半円状にシートが並び、最前列には寝転んで見ることができるカップルシートがあった。
(どこの席なんだろう)
さゆかがキョロキョロしていると
「さゆかちゃん、こっち」
カップルシートの前で立ち止まる滝。
「え…」
「はい、座って座って」
驚きながらも靴を脱ぎ、座るさゆか。
「限定の席らしくて、予約しておいたんだ。誕生日だし、特等席がいいかなって」
(わざわざ予約してくれたんだ。嬉しい。え、でも待って。むちゃくちゃ近くない!?カップルシートってカップルのためのものだよね!?え、今から推しの隣に寝転ぶの!?)
焦るさゆかの横で、すでに寝転んでいる滝。
「ん?どうしたの?そろそろ始まるよ」
「あ、いえ。…失礼します」
頬を赤くしながら横に寝転んだ。
上映が始まり、数々の星が映し出された。
(わぁー綺麗…)
夢中なさゆかの横顔を見て、小さく微笑む一優。
「あ、これ今日の夜空だね」
小さな声で一優が話しかける。
「ほんとですね」
(やばい。夢中になり過ぎて、推しが至近距離にいることを忘れてた。今、気付いたけど…手が地味に触れてるんだけどー)
急に手に力が入り、ドキドキするさゆか。
(ドキドキしてるのは私だけかな…。そもそも彼女いるかもしれないのに。聞いていいのかな)
「…こういう所、彼女と来たりするんですか?」
(知りたくない答えが返ってくるかもしれない。だけど、これ以上のめり込んでしまう前に知りたい)
「彼女?…いないよ」
視線は上を向いたまま、さらっと答える滝。
(たぶん今、目が合ったら心の中が見透かされてしまう。…良かった、いないんだ)
プラネタリウムを終え、車に戻った2人。
「夜ご飯なんだけど、今日の気分で決めれたらと思ってて。今、何が食べたい気分?」
「誕生日っぽくないかもしれないけど…」
「ん?遠慮なく言って」
「ピザで!」
「最高じゃん!よし、この辺のイタリアンの店調べようか」
スマホで検索を始めた。
見つかったお店でピザを食べ、和気あいあいと楽しい時間を過ごした。
帰りの車内。
(あっという間だったなぁ。推しに誕生日をお祝いしてもらえるなんて、幸せ過ぎた)
幸せな気持ちで外を眺めていた。
「少し寄り道するね」
着いたのは、球場の駐車場。夜間のため人はおらず、グラウンドを照らすライトだけが付いている。
「ごめん、特に外に出るとかじゃないんだけど、誰もいないところがよくてさ」
シートベルトを外しながら滝が言う。
(??私も外した方がいいのかな)
シートベルトを外しながら、さゆかがスマホの時間をみると21時56分だった。
(そろそろ帰る時間だけど、どうしたんだろ)
「ねぇ、見て」
さゆかに自分の腕時計を見せる滝。
(ん?)
首をかしげるさゆか。
「ほら、時間」
「時間?…あ!進んでる!」
「さっき2時間進めておいたんだ。2人でいるこの空間だけ、今は23時57分。つまり…あと3分で誕生日」
「ふふ、タイムスリップだ」
「どうしても1番に直接お祝いしたくて」
(ずきゅん)
時計の針は59分45秒。
「一緒にカウントダウンしようか」
「「10、9、8、7、6、5…」」
(やば、見つめ合ってる…心臓止まりそう)
「「4、3、2、1!」」
「お誕生日おめでとう!」
「ありがとうございます。こんなに素敵な誕生日カウントダウン初めてです」
微笑み合う2人。
(この人は推し。好きになっても意味がないのは分かってる。だけど、今この瞬間だけ、目の前の彼を好きでいさせて)