貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
転勤すれば、新幹線で三時間弱の距離。
もちろん、会うことは出来る。
しかし、この毎日は。なんでもないときにふらっと集まって、普段仕様の料理を作り、決して高級品ではないお茶を飲み、他愛もない話をする。
こんな日々は、もう過ごせなくなってしまうだろう。
明人は、ぞっとするほどの喪失感が込み上げてくるのを感じた。
嫌だ。彼女がすぐそばにいない生活など、もう想像も出来ない。
詩乃の笑顔が、慌てた顔が、ほっとした顔が、心配そうな顔が、心の中に次々と浮かんでは消えていく。
そばにいたい。離れたくない。離したくない。
まるで、最初からすぐ隣にいた大切な人と、改めて出会い直したような恋だった。
穏やかで、自然で、暖かくて、居心地のいい交流。
だからこそ、明人の中に眠る荒々しい欲望は、まだ隠しておかなければならない。
あの場で本当の気持ちを言ってしまえば、なにかが壊れてしまう気がした。
あなたと共にいたいから、転勤などしたくないのだと。だから悩んでいるのだと。
しかし、それを告げたところで、なにが出来ただろう?