貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
(いつもカッコいいけど、今日は特に……なんかほんとに、恋人同士みたい)
明人はというと、表情はいつもと全く変わらない。
クリスマスイブのことを話に出さなかったくらいだから、これもデートだとは思っていないのだろうか。
「今夜は、一段と素敵ですね。お洒落したんですか?」
向かい合って座った明人が、気軽な調子で言う。
少しだけ前のめりになって、詩乃の目をじっと見ているようだ。
「えっ! え、えっと、うん!」
どきんと、鼓動が高鳴る。
今夜の詩乃は、ワインレッドのワンピースにベージュのボレロを合わせていた。
ハイヒールとバッグは黒で揃えて、どちらもおろしたてだ。
「クリスマスだしね。周りもキレイな女の子ばかりで浮いちゃったら困るな〜と思って!」
言いながらも、だんだん顔が赤くなっていくのが分かる。
もちろん、嘘だ。明人に可愛いと思われたくて、綺麗な姿で会いたくて、一所懸命にお洒落をしたのだ。
明人は詩乃の顔をじっと見て、静かに言った。
「とても、お綺麗です」
さらりと告げられた言葉には、どことなく色気を含んでいた。