貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

 そして、あのプレゼント!

 趣味の良いブックカバーも、もちろんとても嬉しい。

 日頃から本を持ち歩いているのに、彼女は気づいていたのだろう。

 しかしなにより、彼女が自らミトンを手作りしてくれるなんて。

 主に女性が使う既製品よりも、一回り大きく作られたミトン。

 ひと針ひと針縫って作ってくれたのかと思うと、愛おしさで胸がいっぱいになった。

 年甲斐もなく、はしゃいでその場で身につけてしまった。

 まるで、クリスマスプレゼントに喜ぶ子供のようだ。

 この贈り物に比べれば、自分が渡したのは実用一辺倒で面白みに欠けるような気もする。

 ペアの食器にしたのは、今後も一緒に食事をしたいという願いを込めていた。

 良い品物なのも、慎重に心を込めて選んだのは間違いない。

 それでも、彼女がもたらしてくれる喜びと驚きに比べると、自分は何も返せていないような気持ちになる。

 こんな感情は、生まれて初めてだ。

 これまで自分に集まってくる女性たちは、皆なにかを与えてもらおうとしていた。

 別にそれでも、構わなかったのだ。

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