貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
「ここでくつろぎなよ。せっかくの良いお部屋なのに」
座卓を見ると、ちょっとした茶菓子やこの周辺の観光マップもある。
明日観光出来るかは分からないが、少なくともロビーよりこの部屋の方がのんびり出来るはずだ。
「え、ええと」
明人は、少しうろたえたように見えた。
「分かりました。では、そうします」
考え直したらしい。やはり、ロビーに何か用事があるわけではないようだ。
「絶対その方がいいよ〜。お風呂のあと、ご飯食べに行こうね」
さっそく、旅行リュックから必要なものを探し出す。
ホテルに入る前に急遽コンビニで買った下着を取り出そうとしたとき、明人の意図に気がついた。
同じ部屋に、明人がいる中で素肌を晒すことになるのだ。
少なからず、明人はそれを意識してくれたのだろうか。
「じゃ……じゃあ、先にお風呂もらいまーす!」
そわそわする心を落ち着けながら、詩乃は努めて元気よく宣言して脱衣所の戸を閉めた。