貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
……それにしても、彼女は可愛かった。
そもそも、朝待ち合わせた時点で驚かされた。
珍しくスカートを履いて、控えめで愛らしい化粧をして。
クリスマスのときとはまた違った可愛らしさに、見惚れているのを隠すのに苦労した。
その上で「可愛くなぁい?」なんて、可愛いとしか言いようのない顔をして見上げてくるなんて。
その後も、詩乃の一挙手一投足から目が離せなかった。
古い街並みの、美しい景観の中、連れ立って歩く心地良さ。
彼女が私の好きな人なのだと、大切な人なのだと、宣言して回りたいくらいの輝けるひとときだった。
全くもって、自分らしくない。本当に、どうかしてしまった。
土産物を選ぶ、嬉しそうな顔。真っ先に、二人で使う箸置きを選んで。
自分が贈ったペアの食器に、お返しをしてもらったような気分だった。
これからもずっと、一緒に食事を作って楽しむあの時間を共有したい。