貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
衣服を脱いで掛けながら、案外冷静でいられる自分に少し安心した。
とにかく、今夜の安全が確保できてよかった。
喫茶店にいるときに、宿を取る決断をしたのは正解だった。
店を出ると、困った様子の観光客がちらほらいた。
きっと、近くの宿泊施設はあっという間に埋まってしまっただろう。
浴室の戸を開けると、湿った空気が肌を撫でる。
広々とした、実に立派な檜風呂だ。木の香りが清々しい。
浴槽も、床も、濡れてはいるが綺麗に清められている。
お湯を溜めながら、立ったまま手早く頭と身体を洗った。
勢いよく噴出するお湯が、あっという間に浴槽を満たしていく。
そっと湯船に入ると、お湯の匂いが胸いっぱいに満ちた。
足を伸ばし、湯船のふちに頭を乗せる。
うんざりするほど背丈のある自分でも、のびのびと入浴出来る広さだ。
しばらくの間、明人は何も考えずにじっと目を瞑ってお湯の温もりを堪能した。