貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
「明人くん……」
屈んで、明人が目線を合わせてくれる。
顔が近づくと、闇の中でも、明人が心配そうな面持ちなのが分かった。
流れるように、広げられたその腕の中に飛び込む。
「詩乃さん」
ぎゅっと、明人の腕が、詩乃の小さな体に回される。
「だ、大丈夫。ちょっと、びっくりしただけ」
詩乃が言葉を発すると、明人はほっとしたように息をついた。
この人は——明人は、一目散に駆けつけてくれたのか。
「大丈夫ですよ」
低く、穏和な声が、耳朶を掠める。
いつか慰めてくれたときのような、限りなく優しい声。
「私がいます」
その瞬間、詩乃の胸を、甘い痛みが貫いた。
——私がいます——ずっと、ずっとそばにいてくれたらいいのに。
このままずっと、二人寄り添って過ごしたい。