貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜
誰にでも、あんな無防備な姿を見せるわけではない。
明人だから。彼だから、触れたい。触れてほしいと思って、わざと誘うように手を握ったりしたのだ。
いや、もしかしたら。明人は本当に、共寝すること自体が嫌だったのかもしれない。
自分は床で寝ると言い出したり、お風呂に入るときに部屋から出て行こうとしたりするくらいだ。
もしかしたら、もしかしたら。本当は、本気で嫌がっていたのかもしれない。
けれど、面と向かって嫌だとは言いづらかったのかも。
「ど、どうしよう!? もしかしたら、嫌がる明人くんと無理やり一緒に添い寝したのかも!?」
考えれば考えるほど、ドツボにハマっていく。
そもそも、もしかしたら異性愛者ではない可能性だってあるのだ。
思えば、明人は出会った当初から、特に詩乃を女の子扱いする様子はないではないか。
「あまり誘惑されると、困ります」
そう言って、悩ましげに目を逸らす明人の色気ある姿も思い出した。
もしかしたらもしかしたら、あれも文字通り「女性に興味はないのに、誘われても困ります」という意味だったのだとしたら!?