貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜

 誰にでも、あんな無防備な姿を見せるわけではない。

 明人だから。彼だから、触れたい。触れてほしいと思って、わざと誘うように手を握ったりしたのだ。

 いや、もしかしたら。明人は本当に、共寝すること自体が嫌だったのかもしれない。

 自分は床で寝ると言い出したり、お風呂に入るときに部屋から出て行こうとしたりするくらいだ。

 もしかしたら、もしかしたら。本当は、本気で嫌がっていたのかもしれない。

 けれど、面と向かって嫌だとは言いづらかったのかも。

「ど、どうしよう!? もしかしたら、嫌がる明人くんと無理やり一緒に添い寝したのかも!?」

 考えれば考えるほど、ドツボにハマっていく。

 そもそも、もしかしたら異性愛者ではない可能性だってあるのだ。

 思えば、明人は出会った当初から、特に詩乃を女の子扱いする様子はないではないか。

「あまり誘惑されると、困ります」

 そう言って、悩ましげに目を逸らす明人の色気ある姿も思い出した。

 もしかしたらもしかしたら、あれも文字通り「女性に興味はないのに、誘われても困ります」という意味だったのだとしたら!?
< 180 / 223 >

この作品をシェア

pagetop