貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


「作業で、分からないところはない?」

 沙耶がモニターを覗き込みながら、優しく聞いてくれる。

 配属されたばかりの詩乃が頼まれたのは、過去に使ったファイルの簡単な整理だった。

 とっくに終わった案件で、過去に作った様々なデータのファイルをジャンル別にフォルダに分けておく作業。

 もう直接仕事に使うデータはないが、整理しておけば見返して参考にするときに便利だ。

 緊急性はなく、そこまで重要な仕事でもない。

 だが、少しずつでもやっておけば、着実に全体の生産性がほんの少し上がる。

「大丈夫です。ここまで終わりました」

 詩乃が進み具合を見せると、沙耶は少し驚いて言った。

「仕事が早いわね。事務職は、初めてだと聞いていたのに」

「ありがとうございます。こういう細かい作業も、けっこう好きなんですよね」

 小さいことでも、褒められると嬉しい。詩乃は、ニコニコして答えた。

「続きも頑張って。でも、疲れたら遠慮なく一休みしてね。無理はしないで」

「ありがとうございます」

 笑顔で答えて、仕事に戻る。整理を頼まれたファイルはまだたくさんあるが、頑張れば早く終わらせられそうだ。

 詩乃は、気合いを入れて作業に集中した。
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