貴女だけが、私を愚かな男にした 〜硬派な彼の秘めた熱情〜


 殺伐とした部署だった。

 営業部は、いつも厳しいノルマに追われている。

 数字を上げられない責任は、セールス担当者の肩にのしかかった。

 そんな中で、詩乃はずっとナンバーワンの売上を保っていた。

「早瀬さん、また売上トップだって」

「顔が良いと得よねぇ。おまけにぶりっ子しちゃってさ」

 強いプレッシャーが、呪いのように連鎖していく。

 上層部からは部長へ、部長からは社員ひとりひとりへ。

 そして、ライバル同士は常に睨み合っている。

 そんな環境で、ナンバーワンを取れない連中の妬みが詩乃に向かうのは自然なことだったかもしれない。

「どうやったら、あんな大口顧客を言いくるめられるのかしら」

「金のある会社のお偉いさんに媚びてたら、そりゃ売上も上がるわよね」

 売上を出すために必死な彼らを横目に、詩乃はいつもゆったり構えるようにしていた。

 それもまた、彼らの妬みと恨みを買った。

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