ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 重要な案件の採択は、最終的には当主の判断に委ねられる。
 やはり彼らだけでは荷が重すぎたのだろうか。

「アンドレア。シュナイダー家のことは、もうアンドレアが気にすることではないわ」
「ええ、分かっているわ」

 エリーゼの言う通りだ。
 この先シュナイダー家がどうなろうと、今のアンドレアに何かをしなければならない義務も義理もなかった。

「むしろ気にしないといけないのは、わたくしたちケラー侯爵家かもしれないわ」

 めずらしくエリーゼが大きなため息をついた。

「相変わらずお義父様は、頻繁にシュナイダー家に通っているわ。何かよくないことでも企んでないといいのだけれど……」
「あのお父様のことだから、十分にあり得るわね」

 ケラー侯爵の野心のために、いちばんに利用されて来たのはアンドレアだ。
 こうやって舞台から降りてみて初めて、この喜劇の全貌がようやく見えてきたように感じた。
 すべての発端はケラー侯爵の野望だった。
 先代シュナイダー公爵の死が、恐らくその引き金を引いてしまったのだろう。

(お父様は、まだライラという駒を手にしているし)

 未だ何か企んでいても不思議ではない話だ。
 このままだと父親のせいで、エリーゼたちにも被害が及ぶかもしれない。
 それにアンドレア自身も、ケラー侯爵の隠し子の立場でシュミット家に嫁いできている。

(いずれこのことがお父様に知れたら、それはそれで厄介だものね……)

 ようやく手にした安寧の地だ。
 こんな自分でも、エドガーは快く妻に迎えてくれた。
 その恩をあだで返す真似だけは絶対にしたくなかった。
 これは最早、野放しにしていい事態ではないのかもしれない。

「そうね……お父様にはそろそろ舞台から降りていただこうかしら」

 大事なものを守るため、アンドレアは再び戦う覚悟を腹に決めた。

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