ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「アンドレア様はケラー家に迷惑をかけられないと、最期までそうおっしゃっておりました」
「そう……アンドレアらしいわ」
しんみりと言って、エリーゼはマリーの顔を見た。
「それにポール様には失望してしまったわ。ね、そうでしょう? マリー」
「はい……アンドレア様が亡くなられたときに、葬儀すら使用人任せで……結局、アンドレア様はわたしを含め、数人で見送らせていただきました……」
「お腹に子もいたのに……わたくし、本当に腹立たしいですわ」
「わたしも早々に暇をいただいて参りました。アンドレア様のいないシュナイダー家などいる意味はありませんから」
「それ以上は口を慎め」
鋭く言うと、ケラー侯爵は不機嫌そうに食前酒を煽った。
「でもお義父様……今日はアンドレアの誕生日ですのよ。今日くらいはお許しいただいたってバチはあたりませんでしょう?」
そのとき、きぃ……とドアが開いた。
その奥の暗がりから、誰かが音もなく中へと歩み寄ってくる。
何とはなしにその人物を見やって、ケラー侯爵は手にしていたグラスを取り落とした。
引き攣れた悲鳴を上げて中途半端に立ち上がる。
「ア……ア……!」
「お義父様? どうされました?」
その様子にエリーゼは不思議そうに小首傾げた。
青ざめたケラー侯爵の震える指が、何やら入口の方を指し示している。
「あ、あ、あ、あそこに!」
「あそこに?」
何も見えないそぶりで、エリーゼはそちらに視線をやった。
「あちらに何かございまして?」
「何を言っている! あそこにアンドレアがいるではないか!」
「アンドレアが?」
困惑気味にエリーゼがマリーを見る。
マリーも分からないといったように首を傾げた。
「アンドレア様はもうお亡くなりになられました」
「そんなことは知っている! だがあそこにいるのは何なのだ!」
そのときエリーゼとマリーが不自然に動きを止めた。
ふたりとも一点を見つめたまま、ぴくりとも動かず固まっている。
「お前たちにも見えるだろう? おい、どうした。見えると言ってくれ!」
動揺のあまり、ケラー侯爵は後ずさって椅子を倒した。
その間にもアンドレアはゆっくりと歩を進める。
睨むように、ケラー侯爵だけを凝視し続けながら。
「そう……アンドレアらしいわ」
しんみりと言って、エリーゼはマリーの顔を見た。
「それにポール様には失望してしまったわ。ね、そうでしょう? マリー」
「はい……アンドレア様が亡くなられたときに、葬儀すら使用人任せで……結局、アンドレア様はわたしを含め、数人で見送らせていただきました……」
「お腹に子もいたのに……わたくし、本当に腹立たしいですわ」
「わたしも早々に暇をいただいて参りました。アンドレア様のいないシュナイダー家などいる意味はありませんから」
「それ以上は口を慎め」
鋭く言うと、ケラー侯爵は不機嫌そうに食前酒を煽った。
「でもお義父様……今日はアンドレアの誕生日ですのよ。今日くらいはお許しいただいたってバチはあたりませんでしょう?」
そのとき、きぃ……とドアが開いた。
その奥の暗がりから、誰かが音もなく中へと歩み寄ってくる。
何とはなしにその人物を見やって、ケラー侯爵は手にしていたグラスを取り落とした。
引き攣れた悲鳴を上げて中途半端に立ち上がる。
「ア……ア……!」
「お義父様? どうされました?」
その様子にエリーゼは不思議そうに小首傾げた。
青ざめたケラー侯爵の震える指が、何やら入口の方を指し示している。
「あ、あ、あ、あそこに!」
「あそこに?」
何も見えないそぶりで、エリーゼはそちらに視線をやった。
「あちらに何かございまして?」
「何を言っている! あそこにアンドレアがいるではないか!」
「アンドレアが?」
困惑気味にエリーゼがマリーを見る。
マリーも分からないといったように首を傾げた。
「アンドレア様はもうお亡くなりになられました」
「そんなことは知っている! だがあそこにいるのは何なのだ!」
そのときエリーゼとマリーが不自然に動きを止めた。
ふたりとも一点を見つめたまま、ぴくりとも動かず固まっている。
「お前たちにも見えるだろう? おい、どうした。見えると言ってくれ!」
動揺のあまり、ケラー侯爵は後ずさって椅子を倒した。
その間にもアンドレアはゆっくりと歩を進める。
睨むように、ケラー侯爵だけを凝視し続けながら。