ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「いやぁ、やめてっ、ライラは公爵夫人よっ」
「こいつが領主の情婦か!?」
「きゃあぁあっ」

 なだれ込んでくる民衆。狂気に満ちた熱気。飛び交う怒号と悲鳴。
 目の前に迫り来る危機に、ポールは何もできずに恐怖で立ち尽くした。

「うわっ、なんだ、離せ!」
「ぐあっ」

 すぐそこまで来ていた領民が、ひとりまたひとりと目の前から排除されていく。
 金属がこすれる耳障りに音とともに、奥から現れたのは甲冑を身に着けた大勢の騎士たちだった。

「――お爺様が城から援軍をよこしてくださったのか!」

 甲冑の胸元には王立軍の紋章が誇らしげに刻まれている。
 途端に勢いづいて、ポールは瞳を輝かせた。

「ふはははははっ! いいぞ、無能な愚民どもなどすべて蹴散らしてしまえ!」

 当然とばかりに騎士たちに命令を下す。
 高笑いが止まらないポールの周りを、騎士たちはあっという間に取り囲んだ。

「な、なんだ、何をするっ」

 騎士ふたりに左右から腕を拘束される。
 中でも一番立派な甲冑を身に着けた騎士が、身動きが取れなくなったポールの目の前に広げた書状を突きつけた。

「ポール・シュナイダーだな。王命により、騒乱罪でライラ・シュナイダーとともに身柄を拘束する」
「な、なんだとっ」

 力づくで背後から押さえつけられる。
 うつぶせの状態にさせられたポールは、背中に回した両腕をきつく縛られた。

「な、なにをやっているんだっ。捕まえるなら愚かな民衆たちの方だろう!」
「立て。貴様はこれから監獄行きだ。王の裁きがくだるまでそこで大人しくしてもらう」
「なっ、何かの間違いだ! 俺はポール・シュナイダーだ。公爵であり、王位継承権も持っているんだぞ!? やめろ! お爺様がそんなことをなさるはずがない! おい、離せっ、離さないか……!」

 無理やりに立ち上がらされると、ポールは後ろから小突かれながら有無を言わさず先に進まされた。
 静まり返った屋敷の中で、大勢の使用人と民衆たちの不躾な視線にさらされる。
 屈辱の中、ポールは城の地下にある監獄へと収監されたのだった。

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