ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
「な、何を言っているんだライラ! お爺様、ライラは少々頭が弱いのです! こんな戯言、聞く価値はありませんっ」

 割って入ろうとしたポールを、騎士がすかさず取り押さえる。

「黙っていろ! 今、お前に発言の許可は下りていない」
「くっ」

 床に抑えつけられ、屈辱にポールは顔を歪めた。
 そんなポールを鼻で笑ってから、ライラは尚も国王に向かって言い募った。

「ライラは結婚式も上げられなかったし、公爵夫人になっても一回も舞踏会に行けなかった!」
「黙れ、ライラ! それ以上は言うんじゃないっ」
「王妃様にだってしてくれるって言ったのに、ポールはひとつも約束守ってくれなかったじゃないっ」

 涙目になって、ライラはポールを睨みつけた。

「こんなことになるなら、ライラはポールの子供なんて産まなかった! 王様になれないポールなんて、何の価値もないじゃないの!!」
「な、なんだとっ」

 泣き叫ぶライラにポールは顔を真っ赤にした。
 周囲にいた騎士たちからは、(こら)えきれない失笑が漏れて出る。

「ふむ、ならばライラ・シュナイダー、お主には名誉挽回の機会を与えよう」
「本当ですか!?」
「新シュナイダー公爵との婚姻を命じる。心を入れ替え、献身的にシュナイダー家を支えるが良い」
「ええ、そんなっ」

 新しく公爵になる王太子はポールの伯父だ。
 親子ほど年の離れた男の妻になることを想像して、ライラは醜く顔を歪ませた。

「せめてもの慈悲だ。王妃にはなれなくとも、公爵夫人の立場で舞踏会にはいくらでも出られようぞ」
「年寄りの妻だなんて絶対に嫌です! そんなんじゃいくら着飾ったって、みんなのいい笑いものじゃないっ」
「はははははっ、ざまはないな! ライラ、お前のように馬鹿で浅はかな女には、伯父上のような愚鈍で小太りの年寄りくらいが丁度いい!」
「なんですって」
「王前であるぞ! 口を慎まないか」

 つかみ合いの乱闘を始めそうなふたりを、騎士たちが引き離した。
 稀に見る無様な裁判だったと、この一件は社交界でも長く噂になるのだった。

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