ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 なんとも人を馬鹿にした話だ。
 離婚したくない理由も、結局のところ仕事を押し付ける人間がいなくなったら、ポールが困るというだけの話だろう。

「わたくしにお飾りの妻に甘んじろと言うの?」
「どうしてそう曲解する。今後も公爵夫人の地位は保証してやると言っているんだ。領地の仕事もこれまでと変わらずやらせてやる。お前にしてみれば身に余る光栄な話じゃないか」
「そうよ。このわたしが日陰者になってまで、お姉様を立ててあげるって言ってるのよ? そんなワガママ言うなんてどうかしてるわ」

(どうかしているのはそっちの方よ)

 眩暈に次ぐ眩暈に、片手で目を覆って天を仰がずにはいられない。

「ライラは健気でやさしいな」
「だってお姉様の石頭じゃあ、女の悦びなんて一生味わえないでしょう? だったらせめて立場だけでも守ってあげないと。あんまりにも可哀そうじゃない」

 アンドレアにしか見えない角度で、ライラはせせら笑ってくる。
 ポールに抱き寄せられると、途端に潤んだ瞳で胸に縋りついた。

「わたしのはいいの。日陰者でも、ポールのそばにさえいられれば……」
「ライラ……」

 感極まってふたりは熱く見つめ合う。

「わたしは愛に生きるわ。ポールの子供なら命を懸けてでも産んでみせる。こんな気持ち、お姉様には到底理解できないでしょうけど」

 悲劇のヒロインになったかのように、ライラは儚げなため息をついた。

(そんなもの、一生理解したくないわ)

 自分に酔いしれるライラの姿に、どうしようもなく薄ら寒さを感じてしまうアンドレアだった。

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