ここまでコケにされたのだから、そろそろ反撃しても許されますわよね?
 エリーゼの言う通り、父ケラー侯爵はライラが成人するまでのつなぎとして、アンドレアを利用した。
 ポールが領地経営の手腕を買わなかったら、今頃アンドレアはとっくに離縁されていたことだろう。

「きっとあとで恨まれるのが嫌だったのでしょうね。だからお義父様はアンドレアを仕向けたのよ。自分で嫁ぐことを決めたと、アンドレアが勘違いするように」
「わたくしが決めたのではなく、お父様にそう思わせられたということ……?」
「そういうことね」

 アンドレアははっとした。
 確かにあのとき自分はまだ世間知らずの令嬢だった。
 そんなアンドレアを掌で転がすなど、父にしてみれば簡単だったに違いない。

「ね、アンドレア。エドガーに悪いと思うのなら、この役目だけはあの子にやらせてあげて。姉として言いたいことはこれだけね」
「エリーゼ……」
「ここまで来てアンドレアが別の男を指名なんてしたら、エドガーは今度こそ再起不能で立ち直れなくなってしまうわ」

 軽く肩をすくめると、エリーゼは穏やかな笑顔を向けてくる。

「だからお願い」
「……分かったわ。ありがとう、エリーゼ」

 お陰ですべて迷いが消えた。
 ここから先に進めば、もうあと戻りはできなくなる。
 アンドレアはこれから子供を身ごもるためにエドガーに会いに行く。
 ポールの子と偽って、シュナイダー家で育てるためだ。
 先にアンドレアが子を産んでしまえば、ライラはあの家でのさばることができなくなる。
 ライラを出し抜くには、これ以外手立ては考え付かなかった。
 
(実際に子を()せるかはやってみないと分からないけれど……)

 天は自分に味方してくれる。
 それを信じ、エドガーの待つ部屋へとアンドレアはひとり向かった。
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