失恋したので復讐します
「ほかの男には触れさせないで」
 甘やかに見つめられながら、千尋はうなずいた。
「私には穂高だけだよ」
「俺も千尋だけだ」
 どちらからともなく近づき唇を重ね、幸せな夜を過ごしたのだった。

 
「どうしよう! 間に合わない!」
 疲労困憊して眠りに落ち、目が覚めたのは朝の六時だった。
 千尋は飛び起きてバスルームに駆け込んだ。
(会社には八時半までに着きたいから、あと十五分で出ないと間に合わない!)
 さすがに二日連続同じ服で出社するのは気まずすぎる。
 最近は千尋と穂高の関係を察している人もいるからなおさらだ。
「大丈夫だって。車で送るよ」
 穂高がのんびりした様子で言う。彼は千尋の後でシャワーを浴びたが、早くも髪を乾かし終えて余裕の態度だ。
「本当? 道路混んでないかな?」
「いざとなったら遅刻すればいいだろ?」
「いや駄目でしょ!」
 目をむく千尋に、穂高が冗談だと笑う。
「千尋は相変わらず真面目だな」
「だって……真面目すぎて嫌だと思う?」
 穂高は窮屈に思ってしまうだろうか。
「まさか。そんなところもかわいい」
 穂高が近づいてきて、千尋の額にキスをした。
「……もう」
 朝から甘さ全開で、これでもかと千尋をときめかせるから困ってしまう。
 ぼんやりと穂高を見つめていると、「用意しなくていいのか?」と声がかかる。
「穂高のせいなのに~」
「嫌だったのか?」
 穂高が甘く見つめながら尋ねる。
(嫌なわけない)
 どん底だった千尋を励まし、前を向くきっかけを与えてくれた。
 そばで支えてくれて、そして愛情を与えてくれた。
「大好きだよ」
 千尋を惑わせて、ときめかせて。これからもずっとそばにいたい。
「俺の方が愛してる」
 穂高にぎゅっと抱きしめられる。
「ちょっと、遅刻しちゃうよ!」
「駄目、放さない」
「穂高ってば!」
 大きな体を無理やり押す。意外と簡単にどかすことができた。
 彼は千尋が嫌がることは決してしないのだ。
(やっぱり好きだな……)
 幸せを感じながら、千尋は準備を再開したのだった。

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