宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-

第6話 巫女の神託

 翌朝、早い時間に支度をさせられ、リーゼロッテは王城から東宮へと移動した。王家の馬車を使ったが、そこにジークヴァルトの姿はなかった。
 到着するなり部屋のひとつに通されて、放置されたまま小一時間は経つ。不安しか込み上げてこなくて、窓もない部屋の中をリーゼロッテは落ち着きなく歩きまわっていた。

(どうしてここに連れてこられたのかしら……)

 神官長が言うには、シネヴァの森にいる巫女に、新たな神託が降りたとのことだった。「託宣」は生まれた時に龍から(たまわ)るもので、受けた者の(あかし)が龍のあざだ。それとは別に、その時々で降りる龍の意思を、この国では「神託」と位置づけている。

 これからは東宮で暮らすように。とにかくその一点張りだった。詳しいことは王女から言葉がある。それだけ言って神官長は行ってしまった。
 本当にあれよあれよという間のことだった。ジークヴァルトと引き離され、夕べは隔離するように部屋の前に見張りが付いた。

 胸元に手を伸ばすも、そこにジークヴァルトの守り石はない。夜会の時はいつも外して、部屋の引き出しにしまってあった。どうして持ってこなかったのだろうと、そんな後悔が湧いてくる。

 ふと部屋の外で人の気配がした。ノックの音に返事をすると、やってきたのはひとりの男だった。年にして二十代後半くらいだろうか?

「お待たせして申し訳ございません。王女殿下がお会いになられます。どうぞこちらへ」

 落ち着き払ったその様子に、リーゼロッテも少しだけ冷静さを取り戻した。

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