可愛い後輩くんは、スポーツ系御曹司でした ~秘密のギャップで溺愛されています~
「……蓮見(はすみ)くん、ウチの会社の社長の孫ってほんと?」

 蓮見くんがハッとした表情になる。

「バレましたか……。こういうパーティーは知り合いがいるから、まずいかもって思ったんですが……」

 蓮見くんが気まずそうに言う。

「いずれ会社を()ぐので、いろんな部署を体験しておかないといけなくて」
「それで、水泳の先生も?」
「ええ。すいません、黙ってて」

 蓮見くんがしゅんとしている。

「ううん、いいの。でも、なんで今日、このパーティーに来たの?」

 さっきの物言いだと、来たくて来たようには見えない。

「先輩が行くっていうから……」
「え?」
「心配で……。まだ顔を水につけられないから」

 信じられない。
 わざわざ、私のためにパーティーに来てくれたんだ。

 すごく嬉しかった。
 でも、同時につらくなった。

(あんな格好悪いところを見られるなんて……)

 私は頑張って笑顔を浮かべた。

「蓮見くん、ありがとう。私、疲れたからこれで帰るね」
「先輩……」

 気持ちがぐちゃぐちゃだ。

 無様(ぶざま)なところを見られた(みじ)めさと、助けてもらった嬉しさと。
 可愛い後輩だと思っていたのに、会社の御曹司(おんぞうし)だったという驚きと。

(頭、冷やさないと……)

 しっかり切り替えて、明日はまた笑顔で出社しなければ。
 私は足早にプールサイドから出た。
< 20 / 23 >

この作品をシェア

pagetop