可愛い後輩くんは、スポーツ系御曹司でした ~秘密のギャップで溺愛されています~

第3話:思わぬ出会い

 夜のフィットネスクラブは仕事帰りらしき人たちがちらほらいた。

(よかった、知り合いはいないわ)

 私はホッとしながら水着に着替えた。
 パーティ用には華やかなビキニを買ったが、レッスン用は実用性抜群(ばつぐん)のスポーティな水着にした。

(パーティーまでにもう少し体を引き締めたいな)

 あわよくば、水泳のレッスンで()せられるかもしれない。
 そんな呑気(のんき)なことを思っていたのも(つか)()、プールサイドでコーチを待っていた私は愕然(がくぜん)とした。

「お待たせしました、田中さん」

 ファイルを手に現れたのは、水着姿の筋肉質な長身の男性だった。

「コーチの蓮見(はすみ)です。今日はよろしくお願い致します」

 爽やかに微笑む蓮見くんに、私は呆然とした。

「はいっ、よろしくお願いします……」

 うつむきがちで声を(ひそ)める。
 混乱しながら、必死でどう誤魔化(ごまか)そうかと頭を回転させた。

(えっ、なんで蓮見くんがここに! しかもコーチって……!)

 慌てる私と対照的に、蓮見くんは落ち着いた様子で手にしたファイルをめくりだした。

「えーと、水が苦手なんですね。初日ですし、泳ぐ前にまずは水に慣れるようにしましょう!」

 これはもしや……気づかれていない?
 そもそも、気づいていたら『さん』付けじゃなくて『先輩』って呼ぶはず。

 田中なんてよくある名前だし、水泳帽をかぶってゴーグルをつけている。もちろん水着姿なんて見せたことはない。

(よ、よかった……!)

 胸をなで下ろした私は、改めて蓮見くんを見た。

(すっごいスタイルがいい……)

 むき出しになった上半身は綺麗に筋肉がついている。
 足もすらりと長い。

(184㎝あるって噂されてたな……)
(学生時代はバスケとサッカーをやっていたって)
(水泳も得意なのね)
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