継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
 ヴィンセント様の優しい手つきは、幼い頃、私をなだめるように髪を撫でてくれたお父様を思い出させる。

「レドモンド卿も、こうしたかったことだろう」
「そう、でしょうか?」
「間違いない」

 どうして言い切れるのか不思議に思って、そっとヴィンセント様の顔を見る。

「お父上は、砦でウサギを飼っていてね」
「ウサギ……?」
「ヴェルと名付けて、よく可愛がっていたよ」
「……!?」
「娘の顔を見に屋敷へ帰りたくなる。だけど、娘がウサギとなって側にいると思えば耐えられる。そんなことをいっていた」

 次々に明かされるお父様の過去。
 どれもこれも、私が知っている厳格なお父様とは思えなくて、ただただ驚いた。

「作り話かと疑ってしまいますわ」
「はははっ、そうだね。膝にのせたウサギを撫でる姿に、私も驚いたよ」
「闘犬を飼っていたというなら、まだ、想像がつきます」
「それはいい得て妙だな」
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