継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
「ヴェルヘルミーナ。そのクッキー、気に入ってくれたかしら」
「はい。とても香りが豊かで見た目も素敵ですね。お花の砂糖漬けは、初めていただきました」
「まぁ、そうなの? こっちはバラの花びらで作った砂糖漬けよ。ふふふっ、作っておいた甲斐がありましたね」
「作って……ローゼマリア様がお作りになられたのですか?」
「えぇ。本邸の庭の花で、毎年作っているのよ。私の趣味みたいなものね」

 驚く私を見て、ローゼマリア様が「今度、一緒に作りましょう」と嬉しそうに声を弾ませた時だった。レスターさんが傍に歩み寄り、小声で話しかけた。

 柔和だった瞳が、途端に凛とした侯爵のものとなる。

「──早かったですね。今すぐ向かいます」

 ティーカップの紅茶を飲み干したローゼマリア様は私を見た。

「ヴェルヘルミーナ、ごめんなさいね。来客の対応をしなくてはならなくなりました」
「……来客、ですか」
「あなたは気にせず、お茶を楽しんでね。ヴィンセント、後はよろしく頼みますよ」

 静かに席を立ったローゼマリア様は、私が話しかける間もなく、レスターさんと共に中庭から立ち去ってしまった。
< 91 / 207 >

この作品をシェア

pagetop