幼なじみの爽やか王子様が執着の獣になりました
4話 執着は密より甘い
〇放課後の空き教室・夕暮れ
唇を噛みしめ、視線を落とす栞菜。
ゆっくりと外を眺める。
栞菜(結局、蓮との一晩は、なにごともなく終わったけど……)
栞菜宅の前で手を振る蓮。
蓮『またお母さんがいないときは、いつでも僕を呼んで』
栞菜(もう絶対呼んでやらないから。第一、私がいつまでも蓮に頼っていたら、いつか蓮に想い人ができたときに困っちゃうじゃ……)
蓮の寝顔を思い出す。涙がぽろぽろと零れる。
ハンカチを取り出して涙を拭いていると彩夢が空き教室に入ってくる。
彩夢「あ、栞菜こんなところにいたんだ。あれ、顔色悪いよ。どうしたの?」
栞菜「なんでもない。心配かけてごめんね」
彩夢は栞菜の座っている席の向かい側に座る。
彩夢「悩んでいることがあったらなんでも相談しなよ。栞菜ったら、むかしから責任感強くてなんでも抱え込んじゃうじゃん」
なんと答えれば良いのか分からず苦笑いをする栞菜。
彩夢「そうだ、栞菜。蓮くんに好きな人がいるって噂知ってる?」
栞菜「え……?」
青ざめる栞菜。
彩夢「あれ、知らないの?」
栞菜「うん、全然」
首を横に振る。
彩夢「みんなが言うには蓮くんが『もう心に決めた人がいる』って話していたらしいよ」
栞菜「へ、へぇー」
彩夢「私は栞菜のことだと思うけど。心当たりないの?」
栞菜の両手を握り、キラキラの笑顔をうかべる彩夢。
栞菜「いや、ない。絶対、私じゃないよ」
彩夢「栞菜と蓮くんってむかしから知り合いなんじゃないの?」
栞菜「そうだけど……あくまで仲が良いのは、私のお母さんと蓮くんの両親だから。私と蓮の仲が良いわけじゃないの」
両手を顔の前で振りながら否定する栞菜。彩夢は疑うような目で見る。
彩夢「ほんと? その割にはいっつも距離近くない?」
栞菜「あはは……」
デフォルメの姿で苦笑い。
〇夕暮れ・帰り道
街灯が灯り始める道を一人でトボトボと歩く栞菜。
栞菜(蓮の好きな人か。どんな人だろ?)
美人な女性とデートに行ったり結婚式をあげる蓮を想像する。
栞菜(きっと優しくて綺麗な人なんだろうな)
両目から涙が流れ始める。
栞菜(また泣いちゃった……どうして?)
涙を拭う。
栞菜(どうして蓮がほかの女性と一緒にいるところを想像すると、こんなに悲しくなるんだろう)
(私おかしくなっちゃったのかな?)
背後から自転車を引きながら春馬が近づいてくる。
春馬「よっ!」
栞菜「あ、春馬くん。いつもは蓮と帰っているのに、今日は一人なの?」
気まずそうに目を逸らす春馬。
春馬「おー、それがな。蓮のやつ今日は体調が悪いって早退しちまってよ」
栞菜「へぇ」
栞菜(蓮が体調不良か。珍しいな)
春馬「栞菜ちゃんは、いつも一人で帰ってんの?」
首を縦に振る栞菜。
栞菜「本当は友達とカラオケとか寄り道しながら帰りたいんだけど、お母さんの代わりに夕食を作らないといけないか」
春馬「マジか。すげぇな。料理ってどんなの作るんだ?」
栞菜「あ……普通だよ。煮物とか、シチューとか。母が仕事で遅いから」
春馬「すげぇじゃん。俺なんかカップ麺ばっかでさ。今度、栞菜ちゃんの作ったの食べてみたいわ」
栞菜「ちょ、ちょっと……」
焦る栞菜。
春馬「あ、ごめん。栞菜ちゃんがあまりにもすごいからビックリしちまって」
栞菜「そんなことないよ。私はただお母さんの負担を減らしたいだけだから。むしろ、いつも他人に世話焼きすぎて彩夢とかから怒られちゃってるし」
春馬は笑いながら自転車を押す。
春馬「栞菜のそういうところ、俺は結構好きだぜ」
栞菜「えっ……?」
思わず立ち止まる栞菜。
春馬「栞菜ちゃんのそういうとこ……俺は、いいと思う」
自然体の言葉に赤面する栞菜。
〇夕暮れ・教室
教室で話していた女子グループの中に、蓮が近づいてくる。
蓮「ちょっと聞いても良いかな?」
女子たちが一斉に蓮を見て赤面する。
女子生徒A「なになに?」
女子生徒B「どうしたの?」
女子生徒C「なんでも聞いて?」
蓮に群がる女子たち。蓮は王子様スマイル。
蓮「栞菜ってもう帰っちゃった?」
女子たちが青ざめる。
女子生徒A「あ……もう帰ちゃったよ」
女子生徒B「そう、16時半ぐらいに」
女子生徒C「もしかして栞菜ちゃんになにか用だった?」
蓮「委員会の書類を渡し忘れてね」
女子生徒C「それだけ?」
蓮「それだけだよ」
女子生徒たちの中で「よかったー」という声があがる。
蓮「教えてくれてありがとう。邪魔しちゃってごめんね」
女子生徒たちに別れを告げ廊下に出る蓮。
今までの爽やかスマイルが消えて、無表情になる。
蓮(16時半か。春馬が「用事があるから早く帰る」と言って下校した時間と同じだ)
申し訳なさそうに「俺用事があるから今日は早く帰るわ。すまん」と言う春馬を思い出す蓮。
スマホを取り出して栞菜に連絡する。
『もう家ついた?』
メッセージを送ってしばらく待ったが返事がない。
蓮(いつもならすぐに返事するのに)
蓮が見下すような目でスマホの画面を見下ろす。
唇を噛みしめ、視線を落とす栞菜。
ゆっくりと外を眺める。
栞菜(結局、蓮との一晩は、なにごともなく終わったけど……)
栞菜宅の前で手を振る蓮。
蓮『またお母さんがいないときは、いつでも僕を呼んで』
栞菜(もう絶対呼んでやらないから。第一、私がいつまでも蓮に頼っていたら、いつか蓮に想い人ができたときに困っちゃうじゃ……)
蓮の寝顔を思い出す。涙がぽろぽろと零れる。
ハンカチを取り出して涙を拭いていると彩夢が空き教室に入ってくる。
彩夢「あ、栞菜こんなところにいたんだ。あれ、顔色悪いよ。どうしたの?」
栞菜「なんでもない。心配かけてごめんね」
彩夢は栞菜の座っている席の向かい側に座る。
彩夢「悩んでいることがあったらなんでも相談しなよ。栞菜ったら、むかしから責任感強くてなんでも抱え込んじゃうじゃん」
なんと答えれば良いのか分からず苦笑いをする栞菜。
彩夢「そうだ、栞菜。蓮くんに好きな人がいるって噂知ってる?」
栞菜「え……?」
青ざめる栞菜。
彩夢「あれ、知らないの?」
栞菜「うん、全然」
首を横に振る。
彩夢「みんなが言うには蓮くんが『もう心に決めた人がいる』って話していたらしいよ」
栞菜「へ、へぇー」
彩夢「私は栞菜のことだと思うけど。心当たりないの?」
栞菜の両手を握り、キラキラの笑顔をうかべる彩夢。
栞菜「いや、ない。絶対、私じゃないよ」
彩夢「栞菜と蓮くんってむかしから知り合いなんじゃないの?」
栞菜「そうだけど……あくまで仲が良いのは、私のお母さんと蓮くんの両親だから。私と蓮の仲が良いわけじゃないの」
両手を顔の前で振りながら否定する栞菜。彩夢は疑うような目で見る。
彩夢「ほんと? その割にはいっつも距離近くない?」
栞菜「あはは……」
デフォルメの姿で苦笑い。
〇夕暮れ・帰り道
街灯が灯り始める道を一人でトボトボと歩く栞菜。
栞菜(蓮の好きな人か。どんな人だろ?)
美人な女性とデートに行ったり結婚式をあげる蓮を想像する。
栞菜(きっと優しくて綺麗な人なんだろうな)
両目から涙が流れ始める。
栞菜(また泣いちゃった……どうして?)
涙を拭う。
栞菜(どうして蓮がほかの女性と一緒にいるところを想像すると、こんなに悲しくなるんだろう)
(私おかしくなっちゃったのかな?)
背後から自転車を引きながら春馬が近づいてくる。
春馬「よっ!」
栞菜「あ、春馬くん。いつもは蓮と帰っているのに、今日は一人なの?」
気まずそうに目を逸らす春馬。
春馬「おー、それがな。蓮のやつ今日は体調が悪いって早退しちまってよ」
栞菜「へぇ」
栞菜(蓮が体調不良か。珍しいな)
春馬「栞菜ちゃんは、いつも一人で帰ってんの?」
首を縦に振る栞菜。
栞菜「本当は友達とカラオケとか寄り道しながら帰りたいんだけど、お母さんの代わりに夕食を作らないといけないか」
春馬「マジか。すげぇな。料理ってどんなの作るんだ?」
栞菜「あ……普通だよ。煮物とか、シチューとか。母が仕事で遅いから」
春馬「すげぇじゃん。俺なんかカップ麺ばっかでさ。今度、栞菜ちゃんの作ったの食べてみたいわ」
栞菜「ちょ、ちょっと……」
焦る栞菜。
春馬「あ、ごめん。栞菜ちゃんがあまりにもすごいからビックリしちまって」
栞菜「そんなことないよ。私はただお母さんの負担を減らしたいだけだから。むしろ、いつも他人に世話焼きすぎて彩夢とかから怒られちゃってるし」
春馬は笑いながら自転車を押す。
春馬「栞菜のそういうところ、俺は結構好きだぜ」
栞菜「えっ……?」
思わず立ち止まる栞菜。
春馬「栞菜ちゃんのそういうとこ……俺は、いいと思う」
自然体の言葉に赤面する栞菜。
〇夕暮れ・教室
教室で話していた女子グループの中に、蓮が近づいてくる。
蓮「ちょっと聞いても良いかな?」
女子たちが一斉に蓮を見て赤面する。
女子生徒A「なになに?」
女子生徒B「どうしたの?」
女子生徒C「なんでも聞いて?」
蓮に群がる女子たち。蓮は王子様スマイル。
蓮「栞菜ってもう帰っちゃった?」
女子たちが青ざめる。
女子生徒A「あ……もう帰ちゃったよ」
女子生徒B「そう、16時半ぐらいに」
女子生徒C「もしかして栞菜ちゃんになにか用だった?」
蓮「委員会の書類を渡し忘れてね」
女子生徒C「それだけ?」
蓮「それだけだよ」
女子生徒たちの中で「よかったー」という声があがる。
蓮「教えてくれてありがとう。邪魔しちゃってごめんね」
女子生徒たちに別れを告げ廊下に出る蓮。
今までの爽やかスマイルが消えて、無表情になる。
蓮(16時半か。春馬が「用事があるから早く帰る」と言って下校した時間と同じだ)
申し訳なさそうに「俺用事があるから今日は早く帰るわ。すまん」と言う春馬を思い出す蓮。
スマホを取り出して栞菜に連絡する。
『もう家ついた?』
メッセージを送ってしばらく待ったが返事がない。
蓮(いつもならすぐに返事するのに)
蓮が見下すような目でスマホの画面を見下ろす。