気まぐれヒーロー2



「ケイジ、くん……」



本城咲妃の真後ろに立っていたのは、にんまりと笑うケイジくんだった。

彼の周囲だけ、ぽっかりと空気の層ができているみたいに、誰も近寄れず。
壁際に押しやられた生徒たちは、ただ呆然と見つめていた。


いつの間にか人だかりをかき分けてやって来ていたケイジくんに、反射的に身を引いた本城咲妃は、彼の胸に背を預ける形になっていて。

彼女の体を片手で支えながら、ケイジくんはもう片方の手で──田川の友達が私に振り下ろそうとしていた拳を、ぐっと掴んでいた。



「あ、あたしに触らないで!」



茫然としていた本城咲妃は、ハッと我に返るとケイジくんから離れ、彼をキッと睨みつける。

それに対しケイジくんは、「そーいう言い方ないんちゃうん。俺、ヘンタイみたいやん」と、肩をすくめて見せた。


音が、消えた。


さっきまでの喧騒が嘘みたいに、廊下には静寂が行き渡る。


そんな中で、ただ一人。

彼だけが、当然のように口を開いた。




「オイ……次はないって、言ったはずやぞ」




低く、地を這うような声。
反抗すること自体が、自殺行為だと悟らせるほどの威圧感。

彼の“鷹”の目は、心臓が握り潰されるんじゃないかってくらいに怖すぎて……。


そんな目に射竦められた田川の友達は、顔から血の気が引き、言葉も出ない。

恐怖に、瞳が細かく揺れていた。


私だって、怖いと思う。

こういう時のケイジくん。


その変貌ぶりは、まさに圧巻としか言いようがない。


誰もが固唾を飲んで見守っているこの状況で、緊迫した空気をぶち破るように──




「ピンチか、ピンチなんだなオイ!ピンチなんだろ?」




突如、男の声が響いた。


しかも聞き覚えのある声だ。


次は何だと、その場の全員が一斉に顔を向ける。



廊下の、窓の方へ。




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