気まぐれヒーロー2
ヒーロー大集合!?の巻
「ピンチなら、呼べ。お前のヒーローを」
人がいたんだ。
開け放たれた窓の縁に、ヤンキー座りで座って、こっちを見ている人が。
ここ、三階だっていうのに。
ぎょっとして、目ん玉飛び出そうになった。
けど、ド肝を抜かれたのはそれだけじゃない。
だってその人──マスクを被ってたんだ。
あれは確か、“タイガーマスク”とかいうやつだ。
お父さんがたまにテレビでプロレスを観ていることがあって、私もチラッと見たことがあった。
勇ましく吠える虎の顔を模したマスクが、この場に似合わなさすぎて……意味わかんなさすぎて。
みんな、唖然としていた。
もちろん私も。
青空と街並みを背景に、窓のフチにヤンキー座りなタイガーマスク。
太陽の光を受けて、金色の装飾がキラキラと輝いている。
非現実すぎて、プチパニックだった。
ここ、プロレス会場だっけ。
私、いつの間にそんなとこにワープしちゃってたの?
ぐるぐる、妄想が回り出す。
アレは覆面レスラー?
私のヒーローは、タイガーマスクだったの!?
ちょいと渋すぎやしないか!?
筋骨隆々のプロレスラーを想像してみたけれど、目の前のタイガーマスクは別にムキムキマッチョではなかった。
むしろマスクを被った頭だけ除けば、うちの制服を着崩したヤンキー風な男子生徒にすぎなかった。
「ほんま好っきゃな~、そーいうの」
ケイジくんは、当たり前みたいにその虎頭に話しかけてた。
それも、親しい間柄のように。
「バーカ。俺は俺のファンに気を使ってやってんだよ。ただの目立ちたがり屋と一緒にすんじゃねえ」
「一緒やろ」
「んなことよりオメーの方が先に目立ちやがって。相棒はどーした、お仲間のまりもと湖に浮いてんじゃねーだろうな」
「いや、知らん。ってか集合かけたんちゃうん」
「アイツ連絡つかねーんだよ。オメー双子だろ、アレ使え。何つったっけ……そーだ!てれぱしーだ、てれぱしーを使え」
「んなもんあるか!!アイツと通じ合いたくもないしな!!」
その掛け合いと、虎頭の口調で──私はだんだん確信していった。
この胡散臭いタイガーマスクの正体に。
だって、やりかねない。あの男なら。
トン、と軽やかに。
窓から廊下に降り立った、タイガーマスク。
近くの生徒たちはビクッと跳ね、すごい勢いで距離を取る。
そんなの気にせず、タイガーマスクは床に座り込む私の方へゆっくり歩いてきて。
彼が進むたび、人が自動的に両脇に避けていく。
まるで波が引くみたいに。
本城咲妃の取り巻き達でさえ、同じように道を空けた。
目を丸くしている私の真ん前で、虎頭は足を止め──
「なんてザマだ、タマちゃんよ。色々トッピングされちまって、まあ……うまそーじゃねえか」
やっぱり、私の思った通りの人らしい発言をしてくれちゃった。