気まぐれヒーロー2



ちっとも悪びれる様子なんて、この男にはまるでない。

自分達は言いがかりをつけられるようなことなんて、何ひとつしていない。

田川大輔の、見せかけだけの王子様の顔は──その腹の内まで透けて見えそうなほど飄々としていた。

隣の本城咲妃も同様に、気の張った顔つきで高圧的な態度を崩さない。


ハイジもハイジだけど、この二人も相当な精神力の持ち主だと思う。


褒めるつもりなんてさらさらないけど、それでも……この二人からは取り巻きとは違う“芯の強さ”を感じた。
譲れないものを抱えているような、そんな頑なさ。


一体、何なんだろう。

私がそんなに憎いの?
私はそこまで彼らを、憎しみのど真ん中に追いやったの?

それとも──別の理由があるのかもしれない。



「へぇ、ぜーんぶ俺の妄想ねえ。オモシレーじゃん、優等生くんでもジョーダン言ったりするのね。けど残念だな~、妄想は得意じゃねーんだよ。コイツの最強の妄想には、いくら俺でも敵わねえ」



ハイジは頭にすぐ血が昇るタイプだから、てっきりキレるかと思った。

田川に掴みかかって殴り飛ばすんじゃないかって……いつでも止めに入れるように、私はドキドキしながら構えていたのに。


緑のアイツは、キレるどころか笑ってた。軽い声で、楽しそうに。

それから顔だけを横に向け、肩越しに後ろの私をちらりと見やる。

口の端を、ニィッと持ち上げて。



“どーせならお前の得意技、『妄想乱れ咲き』をオミマイしてあげたら?”



ハイジの目が、そう語りかけてくる。


くそっ……!!否定できないのが悔しい!!

確かにヤツの言う通りだ!!
妄想だけは、他の誰にも負けない自信がある!!


私から妄想を取り上げたら、廃人と化すだけだ!!

そんなの、ナメクジに塩をかける行為に等しい。

しおしお~の、へにょんへにょ~んになるに決まってる。

酸素がなかったら生きられないのと同じ。


食べて妄想、寝て妄想。
起きても妄想、トイレのお供もまた妄想。


ああ……なんて素晴らしき妄想世界……。



「ありえねえ話じゃねーと思うんだけどなぁ……『ブスにコクられても嬉しくねーし』──そう言ってコイツを振った、アンタならさ」



うっとりとパラレルワールドに旅立った私は、すっかり置き去りのまま。

気づけばハイジはもう、田川との対立の舞台に上がっていた。


私はまんまと、妄想させられていた。



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