気まぐれヒーロー2
翼を受け継ぐ者たち
いつだったか。
“もも”
夕暮れの街並みを、小高い丘から眺めながら、お兄ちゃんと話していた。
他愛もない話だったと思う。
最近あった出来事だとか、お兄ちゃんの仲間のバカ話とか。
なんてことない、日常の話。
そして──お兄ちゃんは、ふと、そんな中で語りだした。
“俺はさ……ヒーローになりてえな”
“ヒーロー?ヒーローって……あの、テレビで子供が見るような?”
“ん?んー……まあそんな感じかな”
“えー、お兄ちゃんもう高校生でしょ。幼稚園児みたいなこと言わないでよ”
“バッカ、歳なんか関係あるか!ヒーローになりたいってのは、男なら誰しも一度は抱く夢なんだ!!ロマンなんだよ!!”
力説するお兄ちゃんを、白けた目で見ていたことを覚えてる。
“お兄ちゃんには無理だよ”
“なんで”
“だってヒーローって、正義の味方なんだよ?お兄ちゃん、不良じゃん。ワルモノじゃん”
“も、ももちゃん……!!そんなこと言うなよ、にいちゃん泣くぞ!?”
“え、やだよ泣かないでよ!カッコ悪いよ!!”
ちょっぴり、引いたりもした。
でも。
お兄ちゃんは冗談言いながらも、結局はすぐに、カッコいいお兄ちゃんに戻っちゃうんだ。
“あんな、もも。そうじゃねえんだ。戦隊モノとかそういうヒーローじゃなくてな”
夕陽に照らされた横顔が、眩しいほど綺麗だった。
その瞬間、私は瞬きすることさえ忘れて──ただ、お兄ちゃんを見つめていた。
“市民のヒーローじゃなくていい。沢山の人間のヒーローじゃなくていい。一人、たった一人でいいんだ”
光を受けて、ゴールドブラウンの髪が柔らかく輝く。
私の瞳にキラキラと、美しい世界を描き出す。
“ソイツにとってのヒーローに、俺はなりたい”
お兄ちゃんは前を見据え、そう言った。
力強い眼差しと笑顔が、今でも忘れられない。
誰かのヒーローで在りたいと。
自分が守りたい者のために、ヒーローでいたいんだと。
その人が困っていたら、いつでも手を差し伸べてあげられるように。
何があっても、この人がいれば大丈夫と、そう思ってもらえるように。
辛い現実から逃げ出したくなった時、その人が安らげる場所を作ってあげられるように。
傷ついた心を、優しく迎えてあげられる人でいたい。
それが──お兄ちゃんの志す『ヒーロー』だった。
なにも、華々しく活躍する必要はない。
ピンチの時にだけ駆けつけるんじゃない。
傍で見守る。
それだけでも『ヒーロー』になれるんだ、って。