気まぐれヒーロー2
“……お兄ちゃんはさ、『ヒーロー』だよ”
“え?”
“わ、私の……ね?”
こんなこと言うの、めちゃくちゃ恥ずかしかったんだけど。
この時だけは、言おうって思った。
自然と、唇が動いてた。
伝えなきゃって。今しかないんだって。
いつも私を守ってくれる。
笑顔をくれる。
優しく頭を撫でてくれる。
頼もしい、お兄ちゃん。
私にとって、絶対的な存在。
幸せを、与えてくれた。
温かい気持ちにさせてくれた。
“も……もも!!!お前なあ、そりゃ反則だ!なんでそんな可愛いんだよ!?にいちゃんもうダメだ!!お前をお嫁になんかやれねえ!!にいちゃんがずっと守ってやるからな!!結婚する必要ねえぞ、彼氏も作んなよ!?”
“い、いやだよ!!結婚とか彼氏とかよくわかんないけど……なんかやだ!!っていうか、結局泣くんだ!?”
私の髪をくしゃくしゃっと、大きな手で掻き混ぜて、
お兄ちゃんは、最終的にちょびっと泣いてた。
だけど、私は忘れない。
この時のお兄ちゃんの、本当に嬉しそうな顔を。
今でも──お兄ちゃんの言葉が、眼差しが、私の胸を焦がしてやまない。
遠い、遠い日の思い出。
今となっては、忙しなく過ぎ去っていく日々に埋もれた……セピア色の記憶。
「……“鴉”は死んだんだよ。あの日、あの夜──響さんと共にな」
寂しげなその声に、私の視界に広がる景色が、ゆっくりと色づいていく。
夕焼けの茜色に染まった街が、夜の帳の中で建ち構える、“鷹”の巣へと移り変わる。
ドラム缶や単車、鉄の匂い。
重厚な倉庫の光景に、焦点が合っていく。
響兄ちゃんの面影が薄れていき、やがて重なり合って現れるのは、物悲しい表情をしたタイガだった。
「それでも、散ってしまった“鴉”を……今も守り続けてくれてるんでしょ?」
彼らといると……感じていた。
どこか懐かしい想いや、香り。
心の奥底に沈んでいった大切な宝物を、掬い上げてくれるような、激しくも柔らかい瞳。
彼らの言葉や仕草、表情は──
私の中で眠っていた“故郷”へと、
優しかったあの時代へと、
そっと手を引いて、導いてくれる。
そんな気がしていた。
今日、この夜。
“黒鷹”に連れてこられた意味を、ようやく私は気づくことができた。
私のヒーローだった……お兄ちゃん。
ううん、今もヒーローでいてくれるのは変わらない。
だけどもう、私と同じ世界にはいないから。
同じ大地を踏みしめることが、できないから。
だから、きっと──
彼ら五人と、出会わせてくれたんだ。