嘘つきなあなたに、もう一度恋をしますか?~冷たい仮面の下の真実~

第15章 真実の暴露

数日後の午後。
邸宅に訪れた侍女が慌ただしく紗良に告げた。
「奥さま、神宮寺令嬢がお見えになっています」

胸がざわめく。
拒絶すべき相手と分かっていながら、紗良は応接室の扉を開けた。

ソファに優雅に腰掛ける玲奈は、涼しい笑みを浮かべていた。
「まあ、奥さま。ご無沙汰しておりますわ」



「……何のご用ですか」
「用件はひとつ。怜司さまのことです」

その名が出た瞬間、紗良の心臓が大きく跳ねた。
玲奈はわざと間を置き、囁くように続ける。

「あなた、ご存じ? 怜司さまが密かに父と対立していることを」
「……え?」

玲奈の瞳が愉しげに細められる。
「彼はあなたに隠していました。西園寺グループと協定を結び、父の会社を封じようとしていたのです」



紗良の胸に、封筒の契約書が蘇る。
「やっぱり……本当だったのね」

「でもね、奥さま」
玲奈の声が甘く絡みつく。
「怜司さまが黙っていたのは、あなたを守るためなんかじゃない。
ただ、自分の立場を守るためよ。――愛されていると思っているのは、あなたの思い込み」



「嘘……」
紗良は息を呑んだ。

玲奈はさらに追い打ちをかけるように微笑む。
「もし本当に愛しているのなら、あなたに隠す理由なんてないでしょう?
彼はもうあなたを信じていない。だからすべてを秘密にしたのよ」



その言葉は刃となり、紗良の胸を深く切り裂いた。
(怜司さん……本当に、私を信じていないの?)

涙が頬を伝うのを、玲奈は満足げに見つめていた。
だがその奥で、彼女自身の胸も奇妙に疼いていた。

(私だって……本当はただ、怜司さまに振り向いてほしいだけなのに)



その夜。
帰宅した怜司を迎えた紗良の瞳には、深い影が落ちていた。
「怜司さん……あなたは、私を守るために隠していたの?
それとも……信じられない妻だから?」

問いかける声は震え、怜司の心を突き刺す。
だが彼は、沈黙しか選べなかった。



「……答えてよ」
泣き出しそうな声に、怜司は拳を握り締める。

(言えない……今はまだ、真実を告げれば彼女を危険に巻き込む)

「……紗良。信じてくれ」
絞り出すような言葉は、もう彼女の胸に届かなかった。



こうして、玲奈の口から暴かれた「真実」は、紗良の心にさらなる疑念を植え付けることになった。
夫婦の溝は、もはや取り返しのつかないほど広がっていく――。
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