Semisweet.
「そもそも、菜穂の元婚約者ちょっとモラハラ気質あんじゃねぇの?」

「何それ、どういう事。」

「仕事辞めないなら婚約解消とかまさしくだけどさ、菜穂が好きだった服装着て言ったらぼろくそ言われたとか、菜穂が言う事聞かなかったり気に入らない事すると無視して、分かってくれるの待ってたとか言ってそういうの全部。」


 どれもこれも私が瑞野に相談した物だった。男心が分からなくて、相談したりしていたのをいまだに覚えていたらしく、その話を今している。

 その時から別れた方が良いと言われていたけど、今までそのアドバイスを無視して振られた。

 きっと今ここで別れたらこの先ずっと1人かもしれないという不安が嫌だったんだと思う。


「そう、だったのかもね。」

「結婚しなくてよかったじゃん。」


 そう言いながらポケットから紙煙草を取り出して口に咥えると火を点けている。

 こんな男が本当に王子様に見えるのか周りの女性は。よくわからない。


「…親とか会社にどう報告しよう…。ていうか、気まずいよ…。」

「良いじゃん、別に。価値観の不一致で別れました~で、別に不思議な事でもないし。」

「それはそうだけど、もう半年も前に婚約したって言っといて、こんなのって…。うちの両親は凄くがっかりするだろうな…。」


 孫の顔が早いうちに見られるかもなんて浮かれていたし、その中結婚が無くなりました。なんて言ったら…。

 自分でも売れ残り確定なのではと思う。


「…てか、結婚ってそんなに大事?」

「将来的に1人で居るのは怖いよ。何が起こるか分からない未来を1人で歩いていく自信なんてない。」


 そう言ってジョッキに入っていた半分くらいの生ビールを飲み干す。


「死んだ時誰にも気付かれなかったらどうしようとか…。」

「早いし、考える未来暗すぎて笑う。」


 ちっとも笑ってなんかいないくせに、笑うなんて真顔で言うな。

 煙草を蒸かして、灰皿の淵でトントンと煙草の灰を灰皿に落とす。

 こんなに顔が整っててバーとかオシャレなお店の方が似合うと思うのに、大衆居酒屋で煙草を吸って生ビール片手に焼き鳥とかを食べている姿を見る方が、瑞野も身近な人間だって感じられて安心する。
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