双子の悪女の身代わり〜実は私が創世の聖女です〜
お店に入ると、カリンが目を輝かせた。

「なんだか、帝国はお店の中もキラキラしてますね」
「ふふっ、帝国のこと好きになってくれましたか? ちなみに私はカリンはフリルの可愛らしいデザインが似合うと思いますよ」

 キラキラとは店の中のシャンデリアだろうか。
 私にとっては見飽きたものだが、カリンには珍しいのかもしれない。
 実際、贅を尽くしたようなパレーシア帝国に比べて、カルパシーノ王国は王宮1つとっても質素だった。

 私は彼女に帝国を好きになって欲しい。
 ベリオット皇帝を治したら、すぐにカルパシーノ王国に帰ると言っていた。

 私もルイス皇子も、彼女にアリアドネと交渉したことを言えなかった。
 彼女がセルシオ国王のことが大好きなので、もう彼の妻ではないことを伝えて傷つく顔を見るのが怖いのだ。

 女の子は皆、ルイス皇子を好きになるものだと思っていた。
 麗しい特別な能力を持った次期皇帝になるだろう彼。
 
 カリンが読破したと言っていた『絶倫皇子の夜伽シリーズ』も挿絵を見れば、ルイス皇子をモデルにして書いたのがバレバレだ。

 ルイス皇子も、もっと強引に迫ってみたらどうかと私は思っていた。
彼が命じてくれれば、私はカリンのお茶に媚薬を入れて2人きりにするくらいの事はする。

 それくらいのショック療法でもないと、カリンのセルシオ国王への気持ちは全く変わらないだろう。

 彼女が5日程しか時を過ごしてないセルシオ国王に夢中で、2週間以上彼女にアピールしているルイス皇子を袖にしているのが理解できなかった。
(元奴隷より、次期皇帝でしょ⋯⋯理解できないな⋯⋯)

 カリンは私にとっても初めてできた友人で、夢にみた姉妹のように仲良くできる存在だった。彼女が現れるまでの私は遠巻きにいつも見られていて、孤独を感じていた。
(カリンを手放すなんて、絶対できないわ⋯⋯)
 
「レースの方を買ってしまいました。やはり、セルシオにもドキッとして欲しいので」
「この店丸ごと買い占めますよ。何も1着を選ぶ必要はありませんわ」
「そんなに沢山の寝巻きはカルパシーノ王国に持って帰れませんよ」

 考え事をしているうちにカリンが買い物を済ませてしまっていた。
(彼女の買い物は皇室付で購入するように言われていたのに⋯⋯)

 セルシオ国王は前世で徳でも積んだのだろう。
 このような天使のような子から一途に慕われているのだ。

 店を出るとカリンが待っていた騎士たちに神聖力を使っている。

「立ちっぱなしで疲れますよね。いつもお仕事ご苦労様です」
 聖女の神聖力は帝国では皇室への多額の寄付と引き換えに使われるものだ。
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