最強で、最孤


そのころ、瑠那は汗だくになっていた。

学校の剣道場ではない、所属している地域クラブの道場。

木の床は春とはいえ冷たい。

努力の声が飛び交う。

「そんなんじゃ駄目だ!もっと強く!やる気あんのか!?」

師範は厳しい。だけど、愛がある。

足はしびれ、腕は痛む。もう限界だ。

だが、彼女の目は一点を見据えていた。

「今さら、部活になんて戻らない。1人で強くなるんだ。」

その瞳には、熱く、深く、誰も触れられない闘志がみなぎっていた。

彼女の孤独な春が、静かに始まっていた。
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