最強で、最孤


瑠那は防具を外していた。

額の汗をタオルで拭きながら、ふっと小さく息をつく。

「後輩、か......」

呟いた声には、どこか遠い響きがあった。

「いや、私が教えたところで、あの子達なんか変わらない。変わるわけない。」

部活で交わされる軽い言葉、浅い掛け声、張り詰めない空気。

そのすべてが、彼女には耐えられなかった。

「努力もしないのに、勝とうとするなんておかしいよ......。なんでそうなっちゃうの...?一番嫌いなんだよそういうの」

瑠那の手のひらには、無数のマメが浮かんでいた。

痛みを感じながらも、彼女は竹刀を手に取る。


「——私は、私のやり方で勝つ。あんな人たちのこと、気にする必要もない。」


剣道部でその姿を知っている人は、いない。

孤独な稽古が続いていた。
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