Happily ever after
chapter2
人生初のシュラスコはなかなか楽しい体験であった。
食べ放題という説明を受けた時に健吾が想像したのは、いわゆる一般的なビュッフェの形式だった。
壁沿いに様々な肉が置いてあると想定していたのだ。
入店してすぐに、健吾は自分の思い違いに気づいた。
ビュッフェコーナーにはサラダとデザートしかない。
テーブルに敷かれていた肉の部位が書いてある紙を読むよう優子に指示され、大人しく読んでいたちょうどその時、巨大な肉塊が2人のテーブルにやってきた。
串刺しにされたローストビーフの原型のようなものを差し出され、何枚食べるか尋ねられ、健吾はシステムを理解した。
健吾は興味と好奇心の赴くままに肉を全種類制覇し、2周目を回り始めた。その一方で、優子は途中から食が進んでいない様子だった。
もうずっと、焼きパイナップルとチーズばかりおかわりしている。
「もしかして優子さん、あまり肉は得意じゃなかった?」
「まさか!苦手だったら候補に入れたりしませんよ!っていうかちゃんと食べてます。健吾さんの食事量がおかしいだけです」
「え、そう?」
「自覚ないんですか?あなた、けっこう食べる方ですよ」
呆れたようにそう言われるも、健吾はいまいち納得がいかなかった。
「食べる方だなんて言われた事無いんだけどなあ……弟たちの方がはるかに大食いだし、友達もみんなこんなもんだし」
「そうなんですか?ってことは、もしかして私の周りの男たちが胃袋小さかったのかな」
「そういえば、身長や体重なら目安に出来る平均数値ってあるけど、食事には無いからわからないよね」
「こればかりは男女ともに個人差がありますもんね」
そう言って、優子は焼きパイナップルの最後の一切れを頬張った。
あと一回おかわりするか真剣に悩んでいる優子を見ていると、さっきは敬遠した焼きパイナップルに挑戦してみるのも悪くはない気がしてきた。
「美味しそうに食べるよね。俺も次来たら試してみようかな」
「ぜひぜひ!パイナップルは加熱すると酸味がなくなって甘さが増すんですよ!ここのはすごくジューシーで美味しいし、おすすめです」
「うわ、期待を煽ってくる言い方。あ、もうすぐこっちに来る」
パイナップルの塊が連なった銀の串がこちらに近づいてきた。
焼きたてのパイナップルは早くも半分なくなっている。
「私1切れで」
「じゃあ、俺は3切れお願いします」
分厚く切られたパイナップルが3切れ皿に置かれる。
軽くナイフを押し当てるだけですぐに切れるほど柔らかい。
一口含み、健吾は目を見開いた。
「うっっっま!え、パイナップルってこんな甘くなるんだ!?」
「ふふふ、癖になる美味しさでしょ?」
得意げに笑う優子の独り言を流し、猛然と皿を空にした健吾はパイナップルの残りを遠目から見極めた。


