おやすみなさい、いい夢を。
エピローグ

一年後 Sakura Side.





「——合格しましたよ。
 東都心大の、医学部医学科です」

その言葉を口にした瞬間、
ナースステーションの空気がぱっと明るくなった。

「えぇー!ほんと!?すごいじゃない、桜ちゃん!」

「おめでとう!努力の賜物だねぇ!」

あの頃、理緒を囲んでいた看護師さんたちが、
みんな笑顔で声をかけてくれる。
あの時と同じ場所なのに、
光の色が少し違って見えた。

「御崎先生、合格祝いに桜ちゃんにご飯でも奢ってあげたらどうですか?」
看護師さんの冗談めいた声に、
周囲の空気が少し和んだ。

私の隣で、日向さんは苦笑しながら返す。

「いや、こんなおっさんと二人で食事とか、
 なんの罰ゲームだよって感じだろ。なぁ、中野さん」

「えっ、全然そんなことないですよ」
思わずそう返すと、
周囲からくすくすと笑いが起きた。

先生の顔を見ると、
少しだけ照れたように視線を逸らしていた。
——その仕草が、昔と変わらないと思った。




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