危険な隣人たち

飛鳥side

「おい、飛鳥。お前、もう手伝いは始めたか?」

飛鳥はうつむいた。
彼の家には、西園寺組のような「ヤクザ」のような勢力はない。
でも、アメリカマフィアの血が流れているから、“運命”は同じだ。

父、ミヒャエル・ハネケから言われた通り、
飛鳥もマフィアの仕事に少しずつ足を踏み入れていた。
けれど、それはどこか遠い世界のことのように思えて仕方がなかった。

「別に、まだ……」

答えた声に、少しの裏切りを感じる自分がいる。
他の子どもたちは学校生活を謳歌し、部活や遊びに没頭している。
でも、自分は違う。

「ゆい……」

その名前が、脳内で何度も反響した。
彼女に対する感情は、竜也とはまた違った種類のものだった。

竜也のように支配したいわけではない。
ただ、彼女を失いたくない。
それが、飛鳥の心の中で強くなりすぎていた。

「俺は、どうすればいいんだ?」

飛鳥は頭を抱える。
彼女が自分をどう思っているのか、未だに分からない。
それでも、隣にいるだけで安心できる自分がいる。
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