執拗に愛されて、愛して
 数年前に別れた時の事がまた頭にちらついて、それを掻き消す様にグッとお酒を飲み干してグラスを置いた。


「さ、程々に飲んだし帰ろうかな。」

「そっか、雅。送ってってあげなよ。夜道危ないし。」


 そう言う玲くんに首を横に振って、拒否する。時間もまだ閉店前だし、雅が抜けたら迷惑も掛かる気がするし、私の為にそんな事にはさせられない。


「いや、いいよ。最悪タクシー使うし。」

「俺上がりでいい?このまんま。」

「いいよ。」

「ねぇ、私の話聞いてる?」

「ちょっとまってて、着替えてくる。」

「聞いてよ。」


 誰一人私の話を聞いてくれなくて少し怒りながら言うと、雅は笑ってカウンターから出た。そしてバックヤードに行く通り際に私の頭をポンポンと少し撫でて行った。

 付き合ってるからなのか、こういう自然なスキンシップが少し増えた気がする。触れられるのが嫌とか今更そういうのはないけど、こういうの久し振りで慣れていない。


「何だ、夏帆ちゃん。雅の事好きでしょ、実は。」

「え?」


 雅の事を私が好きなんてどこにそう感じたのか。態度に出しているつもりも、自分の気持ちの中に常に好きという感情があると感じなかったから、玲くんの予想外の言葉にかなり驚いた。
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