執拗に愛されて、愛して
 ぼんやりと考え事をしていると、他の客の対応に行っていた玲くんが戻ってきて、私の前にあるグラスを見ていた。


「夏帆ちゃん、グラス空になってるよ。何飲む?」


 玲くんに話しかけられたことによって、雅と女性の会話から意識が逸れる。何を飲もうかと一瞬は考えたが、段々ともう飲む気分でも無くなってきた。


「うーん、もう帰ろうかなって。」

「え、もう?珍しいね。」


 少し驚いた顔をしている玲くんに笑って鞄を持って立ちあがる。そのままお会計をすると、玲くんが見送りに外に出てきてくれた。


「夏帆ちゃん、夜道危ないから気をつけてね。また飲みに来て。」

「うん、また今度ゆっくり来る。」


 そう言って手を振ると、バーに背を向け離れていく。

 どうして雅の過去の話や、女性との話をここまで聞きたくないと思ってしまうのか。私にはどうでもいいことだったはず。

 厄介なのは聞きたくないなら聞かなければいいのに、気になってしまうことだった。だから、意識を逸らせなくて、過去の女性関係の事を聞いて腹が立った。

 私だったら本当に好きな男性がいるのに他の男性で気持ちを穴埋めすることも、代わりを探すこともしない。相手にも失礼だから。

 雅はそれを平然と出来てしまうのは考えが違うのもわかっている。どうしても私の代わりを探していたという言葉が今更引っかかって、受け入れられなかった。
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