執拗に愛されて、愛して
 私、酔っているのかも、と軽く溜息を吐いて、面倒な事をぐるぐると考えている自分が恥ずかしくなった。あの男相手にこんなことずっと考えて悩んでいるなんて、今までこんな事無かったのに。

 今日は朝から日差しが強く暖かったのに、雲一つない快晴の日だったからか、夜は肌寒い。油断してジャケットすら着て来ず、震えながら夜道を歩く羽目になってしまった。

 さっさと帰ろうと足取りを少し早めると、後ろから「夏帆。」と声が聞こえて振り向く。


「あれ、雅。どうしたの?」


 さっきまで仕事をしていた雅が、こちらに近付いてくると持っていた上着を羽織らせてくれた。こんなに優しい事してくれると思っていなかったから驚いた。


「何も言わずに帰るとかうちの彼女薄情だよな。」


 文句は言いながらもその声はかなり優しい。

 普段から棘のある話し方をするタイプではないけれど、いつもよりも少し柔らかくて、長年の付き合い故か、そんな違いにも少し気付く。

 気付きすぎてしまうから、雅の1つ1つに反応している自分が居る事に気付いてしまった。


「だって、接客してたし。」

「バカ、声かけられたらお前優先してたに決まってんだろ。声掛けろよ。」


 その言葉に中々素直にうんと頷けなくて、目の前で立ち尽くすだけだった。

 お前を優先してたなんて言葉を素直に喜べない。
 本当に?可愛げもない私をどうして優先するの?なんて思ってしまって、どこまでも可愛くの無い面倒な私が顔を出してくる。
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