執拗に愛されて、愛して
 離れて文句を言おうとしたら、雅は楽しそうな笑顔を見せている。


「他の男に俺のってアピールできんの最高。アイツがフリーだとしたらちゃんと彼氏って言ってこいよ。」

「あ、あんたね…!」

「ほら、時間無いんじゃないの。行ってらっしゃい。」


 引き止めたのは雅のくせに、急かしてきてそんな風に言われると何も言い返せなくなる。腹の立つ笑顔で手を振っている雅を少し睨みつけて、仕方なく車の方に向かった。

 本当馬鹿みたい!ありえない!人前でキスするなんて!と言ってやりたい事は山ほどあったけれど、今はその気持ちをグッと抑え込んだ。

 車の助手席側に回り、乗って乗ってとジェスチャーがされているのを見てから、ドアを開けて乗り込む。


「お、おはよ、佐久間くん。おまたせしてごめんね。」

「おはよ。こちらこそ急にごめんな。」


 普通に接してくれて少しホッとしたのも束の間で、すぐに佐久間くんから「てか、彼氏?いつの間に出来たの朝比奈」と問い掛けられてしまった。

 あの男はこう聞かれるのを望んでいたのだと思う。変な独占欲が湧いて、きっと私が誰かのお手付き済みだと見せたかったのだ。だって、自分の物を他人に取られるのが嫌な人だから。


「…うん、彼氏。」


 癪だけど雅の言う通りにきちんと彼氏だと伝える。そうじゃないとキスをしていた理由も、あの男が私の家に居た理由も何もかも説明が付かない。会社で付き合っても居ない男と過ごせる女だったと言いふらされる方が問題だから、認めるしかない。
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