執拗に愛されて、愛して
 家具の配置を考えたり、購入する家具を考えながらサイズを測ったりしていると、ポケットに入っていたスマホが長く震えた。

 画面を見ると、雅も後ろから覗き込んでくる。表示されているのはうちの母の名前だった。通話ボタンをスライドさせて、電話に出る。


「はい、もしもし。」

『もしもし、元気にしてるの?夏帆。』


 定期的な電話での確認だった。雅と交際していると聞いてからは電話の回数はぐんっと減っていて、久しぶりに感じた。


「あー、うん。今はちょっと引越し準備で忙しいかな。」

『引っ越すの?』

「私じゃなくて雅がね、近々一緒に住むことになったから。」


 そう伝えて頭上にある顔を見上げると、私が母にそう報告するとは思っていなかったのか少し驚いた表情をした後、嬉しそうな顔で笑っている。

 何、この可愛い生き物。顔面が強すぎて脳がショートしている。

 嬉しそうなのは雅だけではなく、うちの母からも嬉しそうな声が聞こえてきた。


『ええ!そうなの!結婚の話とか全く出ないからどうなってるのかと思ってたけど、進んでるのね。』

「付き合ってまだ結婚考えるほど長くないのも事実ね。心配しなくても続いてるから安心して。」


 嘘を吐いたあの時よりは罪悪感が薄れた気がする。嘘を吐いたこと自体は間違っていたかもしれないけど、今は本当に交際をしているから後ろめたいことがない。

 きちんと進んでいると報告が出来て、母を安心させられてよかったと思う。
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