執拗に愛されて、愛して
 先に歩き出した私を追いかけてきていた雅が私の肩に手を置く。


「おい、何怒ってんのって。」

「早く鍵開けて。荷物重い。」


 それだけ言うと雅は大人しく車の鍵を開けて、私は後部座席に乗り込むなりシートベルトを付けてスマホを見る。行きは助手席に乗っていたけど、今は隣にすら座りたくないほど腹が立っていて、雅と目を合わせないようにする。

 そんな私の隣に座ってきて、私の手首を掴んでスマホをいじっていた手を阻む。


「何でお前がそんなに怒ってんだよ。」

「別に、あんたみたいな不誠実なことをしておいて、他人を平気で傷つけるような人間が嫌いなだけ。」

「じゃあ何、優しくすればよかった?」

「言い方があるって話をしてるのよ。今はそういうことしてないで終わった話でしょ。」

「何にしても夏帆に関係ないだろ。」

「そうね、関係ないかもね。早く車出して。さっさと帰りたいから。」


 そう言って雅を睨みつける私と、真顔でこちらを見てくる雅。

 私がこれほど怒っていてもこの男は涼しい顔をしている。こういう所も悔しくて仕方ない。


「あんたのそういうどうしようもない部分を見るたびに、私もあんな風にいつか捨てられるって不安になる気持ち、あんたにはわかんないでしょ。」


 自分でも怒りのせいでなのか、恐怖でなのかわからないけど、そう放った声が震えていて、雅にそれがどう伝わったかは分からないけど、今度は私の手を掴む。


「お前とあの子は違うだろ。」

「何がどう違うかわからないから不安なんでしょ。私があの人より好かれている自信が何もない。」


 初めて零す私の本音に、雅はそっと私を抱きよせる。

 こうやって傷ついたタイミングで優しくしてくるのはこの男のいつもの手口。そう分かっているのに、こうなると突き放せない。
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