執拗に愛されて、愛して
 こんなにあっさりとした内容で決まった事だけど、今実際に雅はここに居る。

 母が「夏帆が使っていた部屋綺麗にしておいたから、そこ2人で使って」と言って、居間に戻っていく。言われた通り、学生時代自分が使っていた部屋に向かって、今度はそこに荷物を下ろした。

 久し振りに見た自分の部屋は学生時代と変わらないまま残されていて、自分でも懐かしさを感じた。


「うわ、懐かし。今とは考えられないくらい可愛い部屋に住んでんな。」

「…昔は可愛いものが好きだったのよ。」


 そう言いながら棚に置いてあるうさぎのぬいぐるみを手に取る。イメージは大人っぽいを目指していても、こういう物も好きで、自分の部屋だけは好きな物を集めていた。


「何かいいな。高校生の時の夏帆がここで過ごしてたと思うと。」

「前にも来た事あるでしょ。」

「もう何年も前だし、あの時大学の時だからそんなに変わってないし。今見るから分かる良さってのもあるじゃん?」

「そう考えたら雅は部屋とか服装とかは何も変わらないわね。」

「たかが数年でそんなに変わらねぇだろ。」


 私の過去に触れて「いいな」と言葉を漏らしたのが意外だった。この人が、誰かの過去に興味があるタイプにはとても見えないのに。

 再会してから意外に感じる事ばかりで、私が居る前は特定の相手を作らずに遊んでいたけれど、今は遊んでいない。私が居る様になってからこの人が変わっていく気がして、不思議だった。


「…あんた、私のどこが好きなの? 」

「え?顔。」


 顔というまで即答だった。思わず呆気に取られる。顔が好きは嫌な気は別にしないけれど、本人を目の前にしてどこが好きと聞かれて一番にこんなに清々しく顔と言えるのだろうか。

 そこまで考えたけれどきっと私も迷いなく顔だと答えたので、人の事言えない、似た者同士なのかもしれない。
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