執拗に愛されて、愛して
 私の複雑そうにした表情を見た後、雅は少し笑って私に近付いて髪に触れる。


「後は、俺しか知らない顔がある所。」


 髪から今度は耳に触れて、その触れ方がやけに優しいのがくすぐったく感じる。


「…そんなのあった?」

「普段こんなに気強いのに、抱いたら凄い良い声で鳴いて、良い顔するじゃん。」

「…何で私こんなのと付き合ってるんだろ。」

「俺の顔面が良すぎたか。罪だな、俺。」


 今すぐボコボコにして使い物にならなくしてやりたい。

 この男に愛だの恋だの求めることがそもそもおかしい事なのだと今になって再確認した。

 人の実家で誰に聞かれているかも分からないのに、情事の話をするなんてどうかしている。


「嘘。人前で強がってるのに、時々俺の前で弱い所見せてくれる所も好き。」


 そう言いながらそっと抱き寄せて、髪の上から耳に向かって口付けをする。

 こういうずるい所はまだ変わっていないらしくて、これだけクズ発言を聞いた後でもときめいてしまった。


「…バカね。早く下に降りましょ。」


 そう言って胸元を軽く押して、雅と距離を取る。この男とは家以外で近くに居てはいけない。どこでも容易に触れてくるからタガが外れる。

 私の考えが読めていたのか読めていなかったのかは知らないけれど、雅は少し笑って同じように距離を取った。
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