執拗に愛されて、愛して
「…寝てていいわよ。私の幸せな時間邪魔しないで。」

「あ?」


 喋ると口が悪い男なのだから黙っていてほしい。とは言え、この男声も良いので時々声も聞きたくなる。

 見た目は全てにおいて完璧な男だ。もう一度言う、見た目は。


「もう行くん、仕事。」

「そろそろ行く。どうせ帰ったら居ないんでしょ。」

「居ない。」


 そう言いながら軽く体を起こして軽く伸びている。本当私達が合わないのはこういう所もだ。性格は見ての通り合わないと思っているし、かと言え趣味が合うとかも無い。

 生活リズムも合わない。私が朝仕事に行って帰ってくるのは夜、雅は夕方に仕事を行って帰ってくるのは深夜か早朝。そして私の休みは土日休み、雅はシフト制で土日は忙しく休みが少ない。

 本当に何で付き合って結婚まで出来たのか、自分でも不思議だったりする。


「というか本当にまだ寝てていいわよ。全然寝てないでしょ。」

「寝てない、けど、また俺が帰ってきた時は、寝てる夏帆にしか会えねぇし、たまには見送りもありじゃん?」


 そう言って私の耳を隠している髪を耳に掛ける。

 こういうふとした瞬間にかなり自然に触れてくるから、唐突な出来事にときめいたりさせられる。それに、こういう発言も。普段クズな男が私にだけ甘く、溺愛してきているのがたまらなく好きなのかもしれない。
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