執拗に愛されて、愛して
「…何?」

「せっかく綺麗な顔してんのに隠れてんの勿体ない。」

「…顔の綺麗な男に綺麗と言われても嬉しくない…。」

「捻くれてんなぁ。」


 私の発言に笑うと少し目を細めて愛おしそうに私の頭を撫でるこの瞬間本当に好き。クズだ何だと言いながらも私は結局この男が好きで仕方ない。女遊びしていた男が私の為に女遊びを止めて、素直じゃない男が私にだけに対して愛を紡ぐ瞬間がたまらなく愛おしくなる。


「…行ってくる。」

「何その全力で嫌そうな顔。」

「イケメン摂取が足りてない。」

「黙れよ、面食い。」


 面食いと言うあたり自分で顔が良い自覚があるのが本当何なんだこの男と思う。まあ普段のモテ具合を考えれば嫌でも自覚しそうな気がするけれど。

 雅の傍から立ち上がって用意していた鞄を持ち、玄関先に向かう。定期的に手入れをしているパンプスに足を踏み入れて、リビングがある方に少し振り向くと雅がそこまでお見送りしてくれていた。

 この瞬間本当に行きたくない。


「夏帆、おいで。」


 そう言いながら軽く抱き寄せてくる雅にこんなのときめかないはずがない。おいでの破壊力。でも呼ばれて行ったわけじゃなくて強引に引き戻された。

 少し上に顔がある雅の顔を見ると、その瞬間に軽く触れるだけのキスをする。こちらは何の準備もしていないから間抜けな顔をしたままだ。


「…は?」

「明日休みだろ。バー寄って。」

「…無理。リップ取れたし、バカ。」

「また塗ればいいじゃん。ちょっと取れただけでうだうだ言うなよ。全部とれるぐらいのキスすんぞ。」


 背筋がゾッとして逃げる様に家を出た。
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