執拗に愛されて、愛して
 今から雅にお説教される事を考えると気が滅入るけど、そんな気持ちを振り払って部長の隣に向かう。


「ご一緒良いですか?部長とお話したくて!」


 そう言いながら部長とその男の子の間に入ると「今のうちに水飲んどいで。お酒変わる」と持ってきた水が入ったグラスと、彼のウーロンハイを交換してその場を避けさせた。

 それなりにお酒が強い自信がある私は、部長の隣に座って役割を変わった。


「おお!朝比奈さん。新婚生活どうなんだ?」


 そう言いながら新品のお猪口をこちらに渡して、そこに何の銘酒かも分からない日本酒をつぎ込まれていく。これが怖い物で度数が分からなければ、小さいお猪口でもかなり不安になる。

 こんなにおいしくお酒が飲めない場所。好きになれる訳が無い。

 新婚生活の話を振られて自然と雅の事を思い出した。そう言えば今日金曜日だ。休み珍しいなとか。こんな飲み会に行くくらいなら、早く帰って一緒に外でご飯とか。手の掛かる料理を作って一緒に食べたかったなとか、そんな風に考えてしまう。


「…喧嘩、もしますけど、楽しいです。」

「そうかそうか。正直朝比奈さんが寿会社とかしなくて良かったよ!反対をしているわけでもないけどね、朝比奈さんは女性の中でも先陣を切って出世している女性だから。」

「光栄です。主人も理解してくれていますので。」


 そう言いながら先程のお酒を片付けて、どんどんとグラスを空けていく。話をしながらも煽られて、お酒は本当においしくなかったけどそれでも代わりに誰があの子を守れるのだろうと思えば助けに入らない訳にもいかなかった。
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