執拗に愛されて、愛して
 雅は相変わらず女性客に人気で、好かれている。その姿は今だけは特に堪えたかも。


「ごめん、玲くん。やっぱりそれ玲くんが飲んでくれる?」

「え?」

「お金、置いてくね。頑張って。」


 そう言って怜くんの「夏帆ちゃん!?」と声が聞こえても振り返らずに店を出た。

 縒りを戻してからこんなに長く引き摺る喧嘩なんて無かったのではないか。縒りを戻してから、というか、大学時代から無かった。

 でも、雅のずっと我慢していたという発言に、それは雅の優しさの上で成り立っていたのかもしれないと、今頃気付かされる。

 思えば、縒りを戻した時も都合がいい関係ならと言ったり、自分の都合で転勤して遠距離にしたり、仕事が好きなのを雅も分かってくれているというのを信じ込んで、話も聞かずに家庭を蔑ろにした。


 本当のクズは、もしかしたら私の方だったのかも。


 今までどれほど雅の好意や気持ちを踏み躙ってきたのだろうか。私には計り知れない程大きくて、受け止めきれない。
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