執拗に愛されて、愛して
 バーの開店前、私はただの客だし…と、バーが開店してから行くと雅に断ったのだけれど、大丈夫だと言い張られてそのまま連れて来られてしまった。


(本当、この男話聞かないし、強引なの何…。)


 今日の私が雅を振り回してストレス発散をする気だったのに、最終的にこちらが振り回されていて、最後に疲れるのは私の方。雅は、振り回せて気分が良いからか、いつも立場が最後には逆転している。

 堂々とお店に入って行く雅に続いて、私も恐る恐る入ると玲くんと目が合った。開店前に入ってくる私に当然驚いた表情をしている。


「あれ、夏帆ちゃん?」

「開店前にごめんね…?大丈夫だった?」

「大丈夫だよ。」

「俺の同伴相手。」

「そういう店じゃないんだけど。」


 同伴相手、という言葉に玲くんは呆れた表情で笑い、雅はそれに気にする事無くバックヤードに下がって行った。おそらく制服に着替えに行って、私はいつもの席に座る。当然だけど客はまだ誰1人も居ないし、BGMも掛かって居ないから静かだ。

 玲くんも雅を見送ると「何で雅と一緒?」と問い掛けてきた。こんな風に2人で遊びに行ってそのままバーに、なんて初めてだから不思議そうだった。


「私のストレス発散に付き合わせたの。」

「なるほどね。」


 そう言って笑いながらいつものようにメニューを渡してくれる。


「ありがとう。でも、1杯目は決めてるの。また雅に前のカクテル作ってもらおうと思って。」

「そっか。」


 あれはメニューに載っていないので頼むとしたら雅か玲くんに直接的に頼むしかない。今日は奴に作ってとお願いしていたから、玲くんのご厚意を今日はお断りした。
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